オラクルひと・しくみ研究所代表の小阪裕司氏も、不況でも人々の消費意欲は落ちてはいないと言う。
「リーマンショック後、多少モノが買いづらくなったということはありますが、消費意欲は減退していません。人がモノを買うときには2つのハードルがあります。
1つ目は、『買いたい』か『買いたくない』かのハードル。買いたくないモノはどんなに安くなっても人は買いませんからね。
2番目のハードルは『買える』か『買えない』かというハードル。不況が続き、この2番目のハードルが上がって、『買いたい』と思っているのに『買えない』という判断を下す人は若干増えたとは思いますが、消費者は買い控えをしたいわけではありません」
小阪氏が主宰している実践企業の会には呉服やバイク、住宅など、一般には買い控えが進んでいるとされる業種の人も数多く参加しているが、業績好調な店や企業が少なくないという。
「マクロな見方で言えば業種ごとに好不調の波はありますが、マクロというのは個々の集積。現在の消費者の気持ちを掴むことができている店や商品は、どれだけ業界が不調でも個々に顧客の支持を得ることができるんです」
消費者の不安感とそのメカニズムを探ることは重要だ。しかし、不安だからモノが売れないと思いこむのは要注意。マクロで切ってしまうと、目の前の顧客が見えなくなると心したい。
※すべて雑誌掲載当時
(永井 浩=撮影)