自分で作ることでモノの価値が高まる

人からの貰いものは不要になれば、あっさり捨てることができますが、自分で買ったものは捨てにくい。しかし、もっと捨てられないのは自分でつくったものです。貰いものや買ったものに比べて、自らつくったものは愛着の度合いがずっと大きいからです。

つまり、モノは自分でつくることによって、その人にとっての価値が大きく高まります。この効果をビジネスに採り入れているのが、世界最大の家具量販店IKEA(イケア)です。

顧客満足度を高める「イケア効果」

IKEAの家具は、それを購入した人が自分で組み立てて完成させるというものです。つまり、組み立てキットとして販売されており、客は説明書を見ながらドライバーを駆使し、あちこちネジ留めをして組み立てていきます。

部材は正確にカットされており、説明書どおりの手順で進めていけば、誰でも組み立てることができます。それでも完成したときの満足感は大きく、同時にその家具には購入者の愛着がたっぷりわいているというわけです。

このようにして顧客満足度を高めるやり方は、IKEAの名をとって「イケア効果」と呼ばれています。これは自分の所有するものにより高い価値を見いだす心理をさす、行動経済学の「保有効果」のひとつです。

なぜ土用丑の日にうなぎを食べる習慣ができのか

「マーボといったら丸美屋」のように「○○といえば××」は、キャッチコピーの定番です。そのフレーズを刷り込まれると、消費者は「○○といえば」と聞いただけで特定の商品やブランドを思い浮かべるようになります。

この宣伝方法の歴史は古く、江戸時代、平賀源内がうなぎ屋に頼まれて考案したという説のある「本日土用丑の日」にさかのぼります。このキャッチコピーを店頭に貼り出したところ、店はたいそう繁盛し、いつしか土用丑の日にはうなぎを食べる習慣ができたとされています。

ここで注目したいのは、このキャッチコピーによって、ひとつの習慣が生まれたこと。習慣化による需要の掘り起こしはマーケティング手法のひとつです。

最近の一例をあげれば、サントリーの黒烏龍茶がそうです。「とくに脂肪の吸収を抑える作用のあるお茶だから、脂っこい食事のときはセットでどうぞ」と訴求して成功しました。この習慣化にひと役買っているのが、行動経済学のヒューリスティックです。

あれこれ熟考して決めるのではなく、直感的・短絡的に結びつけて決めるのがヒューリスティックです。「○○といえば××」は、ヒューリスティックを消費者に植えつけるキャッチコピーといえるでしょう。