人は、なぜそれを買うのか。人間の行動心理を読み解く「行動経済学」は、いまやビジネスでも広く活用されています。その要点はなにか。ジャーナリストの池上彰さんの著書『池上彰の行動経済学入門』(学研プラス)から、「消費者に刺さる宣伝コピー」について紹介します――。
新鮮なオーガニックフード
写真=iStock.com/Nikada
※写真はイメージです

なぜスーパーの店頭は「キリの悪い値段」ばかりなのか

行動経済学はまだ新しい学問で、後述するように、さまざまな耳慣れない理論や専門用語が出てきます。そのため、つい身構えてしまいがちですが、じつのところ、行動経済学を活用した工夫や仕掛けは、私たちの身近なところでたくさん見つけることができます。

たとえばスーパーの店頭で300円、500円といったキリのよい値段がつけられた商品はあまり見かけません。

多くの商品の値段は198円とか399円などのような端数が出ています。食料品や日用品ばかりでなく、衣料品も同じです。

ユニクロに行くと、1990円や2990円の商品がズラリと並んでいます。このようにキリのよい数字から少し下げて設定した値を「端数価格」といいます。

なぜわざわざこうしたことをするかは、もうおわかりでしょう。

たとえば1000円と980円ではわずか20円の差しかありませんが、その数字以上に消費者は980円の表示を見たときに「安いな」と感じてしまうからです。

4桁の1000円と3桁の980円。ひと桁少ない価格表示は、消費者の財布のヒモを緩めるのに充分な効力を発揮するのです。