かつて独立国だったバルト3国などはともかく、ウクライナとベラルーシはロシアの中核的部分だとロシアは考えているので、これが独立し、反ロシアになったとき、ロシアはどう反応するだろうかと、私も懸念を持っていた。

そしてロシアが復活するときは、かならず軍事大国として復活するであろう、なぜなら、それがロシアの歴史的アイデンティティだから、と考えていた。

かつて2000年代後半、ジョージ・ブッシュ大統領時代に、ポーランドにミサイル防衛施設を配備する計画があった。

これに対してロシアは激しく反発した。元来、ミサイル防衛は防衛用のものである。ロシアにポーランドを攻撃する意思がないなら、ミサイル防衛があってもなくても同じではないかと、われわれは考えるが、ロシア人はそうは考えないのである。

純然たる防衛力であっても、ロシアの攻撃力を妨げるものを持つことは敵対的行為だと考えるのである。

古びた戦車
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常態化していたウクライナ国内の紛争

2010年の大統領選挙では、親露派のヤヌコーヴィチが勝利した。そして欧米と距離を置く政策を取り始めた。これに国民から反発が起こり、2014年2月、キエフで反政府運動が高まり、大統領は辞職した。

これに対しロシアはクリミアに軍隊を派遣して、これを制圧した。3月、クリミアの親露系住民は「独立」を宣言し、ロシアへの編入を求め、ロシアのプーチン大統領はただちにこの「独立」を認め、編入をも承認した。

なお、外国軍隊の駐留のもとに、ウクライナの多くの法律に違反して行われたこの一連の行動は、もちろん違法である。クリミアのみならず、東部のいくつもの州で、同様の「独立」運動やテロが起こっている。

2014年5月の大統領選挙では、ポロシェンコ大統領が当選した。依然として東部では戦闘が続いている中で、9月には停戦に関するミンスク合意が定められた。さらに2015年2月には第2次ミンスク合意が行われたが、依然、紛争は続いている。これまでの犠牲者だけで約1万人にのぼるという。ウクライナ政府の支配が及ばない地域がかなりある。

ウクライナの問題は世界の民主主義国家すべての問題だ

ウクライナは国内でも難しい問題をかかえている。とくに難しいのは経済改革である。

ウクライナやロシアには、オリガルヒと呼ばれる勢力がある。旧社会主義国で体制変革が起こり、資本主義化が進んだときに登場する勢力で、メディアを支配し、金融機関を支配し、多くの企業を経営し、しばしば暴力組織とも結びついている。