なお、誤解のないように書くと、証券会社の人たちは詐欺師ではないので、だます目的で顧客に買いを推奨しているわけでは決してない。
かつては引受部門が、アナリストに屑株に関する嘘のレポートを書かせ、それを顧客に高値で売りつける一方、アナリストに高額の報酬を支払って摘発される例もみられた。しかし今は規制も厳しくなり、そのような例はほとんどないだろう。買い推奨にしても、心から上がると信じているから顧客に勧めている場合がほとんどだろう。
ただ、相場が上昇してほしいと渇望するあまり、結果ありきで本当にこれからは上昇すると自分で信じてしまう傾向があることは否定できないのではないか。くどいようだが、悪意をもって意図的に顧客をだまそうとしているわけではない。
楽観論を鵜呑みにしないほうがいい
証券会社の人たちは、銘柄選びも本当にこれから上がりそうだという銘柄を選んで、投資家が儲かるように推奨するのが基本である(販売手数料の高い商品を優先的に売りたがる傾向は否めないが)。そうすれば顧客も、証券会社ともに利益を享受できる。これが理想的な状態である。
顧客とともに栄えるに越したことはない。会社もそれを目指している。下げ相場の時に売り推奨をしたがらないというだけである。
また、一流の証券会社のアナリストやストラテジストの人たちは大変優秀な人が多く、その分析や情報は参考になることも多い。実際にテレビ番組においても「インフレによる金利上昇は株価にとってはマイナスだ」という趣旨の発言も見受けられる(とはいえ「本業で利益は出ているのだから押し目買いのチャンスだ」という論調につなげ、結局は買い推奨をするケースもあるのだが)。
投資家はそういった事情をよく理解した上で、発信される情報を全て鵜呑みにするのではなく、自分なりの意見を持つ努力をすれば良いのである。