リーマンショック直後のアナリスト評価分布
出所=ブルームバーグ等のデータを基に筆者作成

リーマンショックの直後であるにもかかわらず、明らかに買い推奨が多い。その後半年程度の株価の推移は以下の通りである(図表6)。2008年9月末に1万1260円であった日経平均は5ヵ月後の3月2日には7280円まで下落している。

リーマンショック以降の株価推移 日経平均株価(2008年6月~2009年3月)
出所=ブルームバーグ等のデータを基に筆者作成

次に現在のアナリストたちの推奨の分布をみる。明らかに買い推奨が売りを大きく凌駕していることがわかる(図表7)。

2022年2月時点のアナリスト評価分布
出所=ブルームバーグ等のデータを基に筆者作成

経済番組を見ても、上昇している時は「もっと上がるから買え」と言い、下がっている時は「押し目買いのチャンスなので買え」と言っている印象があると思う。「さらに下がりそうなので損してでも売るべきだ」という発言はほとんど記憶がない(筆者にも逆のバイアスがあるのかもしれないが)。

下げ相場の時に「売り推奨」をしたがらない習性

そもそも下げることを「調整」と呼ぶ。上げる時は「調整」とは言わない。

ある商品を売りたくて仕方がない売り手に「それっていい商品ですか? 買った方がいいですか?」と質問して、「実はこれは割高だから買わない方がいいですよ」など答えるわけがない。それと同じ理屈ではないだろうか。

したがって投資家の皆さまも「証券会社の言ったとおりに投資したら損したじゃないか」と文句を言ってはいけないのである。バイアスのかかった意見を言う可能性が高い相手の言葉をそのまま信用してはいけないのは当然だ。