RTD市場流行の背景にも「飲み放題」がある

さて、このようなブーメランによる逆風の中、それでもビール各社は成長戦略を描かなければなりません。今、成長している国内市場はふたつあります。RTD(Ready to Drink)市場とノンアル市場です。

RTDとはその名のとおり、缶をあけたらすぐ飲める飲料のことで、成長の主力は缶チューハイと缶カクテル、缶ハイボールです。RTD市場が若者の間で堅調に拡大している背景には、先ほどお話しした飲み放題があります。

最近の飲食店のメニューでは飲み放題は2種類あるのが普通です。それは飲み放題とプレミアム飲み放題で、わかりやすくいえば飲み放題のメニューでは新ジャンルビールと安いお酒、プレミアム飲み放題ではビールと高いお酒が選べます。

若者が居酒屋で楽しむ場合は当然、価格の安い飲み放題の方を選ぶので、そこで一番飲まれるお酒は新ジャンルビールではなくハイボールだったりチューハイだったりするものです。実際、私が若い世代の飲み会に参加すると、お酒が好きな人は飲み放題でビールが選べないとわかると1杯目からビール類ではないお酒を迷わず選ぶ傾向にあります。

こうして「お酒といえばビールではないもの」という習慣で育った若者は、コンビニで自宅で飲むアルコールを買う際にも220円のビールではなく155円のストロングチューハイを選びます。

コンビニエンスストアの冷蔵庫に並ぶ飲料
写真=iStock.com/Kwangmoozaa
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「ノンアル市場の拡大」は、飲めない消費者に良いトレンド

ちなみにRTDについて低アルコール化のトレンドがあるというニュースを見ますが、販売量を見る限りは今でも主力はアルコール分7%以上のストロング系であることは間違いありません。要するに1缶で十分に酔えるという点が若者のニーズに合致しているわけです。

もうひとつのトレンドであるノンアル市場の拡大は、お酒を飲めない消費者にとっての新しくて良いトレンドです。

日本人には一定数、アルコールが飲めない人がいて、そのひとたちにとって飲み会は居心地の悪いものです。これまでは盛り上がる居酒屋の中で選択肢はウーロン茶と緑茶の2択しかなかったものですから、それで2時間の時間をつぶすのは容易なことではありませんでした。

そこに登場したのがノンアルコールビールであり、ノンアルコールカクテルやノンアルコールチューハイです。味わいにバラエティがあるうえに、オーダー毎に違ったものを楽しむことができるため、ノンアル体質の人にとっても飲み会に参加しやすい環境が整ったのです。