いまでもゲームセンターには「プリントシール機」がある。だれもがスマホを持ち歩き、いつでも写真を撮れるのに、なぜ利用者が絶えないのか。女子高生・女子大生の流行に詳しい稲垣涼子さんは「そこには3つの法則が隠れている」という――。

※本稿は、稲垣涼子『カワイイエコノミー』(日経BP)の一部を再編集したものです。

ハルイロセカイ
画像提供=フリュー株式会社
2022年3月発売の新商品「ハルイロセカイ」

女の子の「カワイイ」がブームをつくる

女の子の好き嫌いを知ることは、世の中を一変させるほどの力があります。

若い女性の需要が起爆剤になって「ブーム」になった商品やサービスは数限りなく存在します。たとえば、90年代でしたら卵型をした小型ゲーム機「たまごっち」。これは、渋谷で試作品を女の子に調査で見せて評判になったのがきっかけでした。最終的に国内だけで2000万台を販売しました。単純計算すると国民の約6人にひとりが持っていたことになります。

ここ数年では、タピオカブームです。タピオカミルクティーが「SNS映えする」と話題になり、一大ブームを巻き起こしました。2019年の台湾製タピオカは、1~8月の日本向け輸出額が前年同期の11倍に拡大し、日本は米国を超えて最大の輸出先になりました。「SNS映え」が貿易統計までをも変えてしまったわけです。

もしかすると、こう聞いても、ビジネスパーソンの多くはあまり自分事に感じないかもしれません。玩具や飲食にかかわらない仕事ならば、若い女性たちの好き嫌いは自分の仕事には関係ないと思っている人は少なくないからです。対岸の出来事に思ってもおかしくありません。十年に一度程度のブームは、マクロ的に見れば国内消費全体に及ぼす影響も小さいとの見方もあるでしょう。

しかし、ただ、私たちが手に触れたり、日常的に使っている製品も「かわいさ」を意識して、つくられはじめていることに気づいていますか?