※本稿は、杉田敏『英語の新常識』(インターナショナル新書)の一部を再編集したものです。
東洋人の別称もさまざま
「東洋人」を意味するOrientalという語は、特に中国人や日本人を指す語だったのですが、ベトナム戦争当時にアジア人を見下した語として侮蔑的に使われることがあったので、現代では禁句となっています。一般的には代わりにAsianが使われ、「アジア系アメリカ人」はAsian-Americanです。中国人を指すChinamanも差別語でタブーです。
人気歌手のビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)が過去の動画をまとめて公開し、その中にChinkと言っているように聞こえる短い動画が含まれていました。この語は中国人、または中国系の人々に対する差別用語です。そこからサイトが炎上し、中国人のファンが怒ったということがありました。
このことを伝えた英語の新聞記事の中にはc***kと伏字にしているところもあり、微妙な語だということがわかります。
私はかつてあるベトナム企業のPRを担当していたことがあるのですが、その企業のトップと会った後に出した礼状に、「よい雰囲気の下でお話ができて……」という意味でin a good atmosphereと書いたつもりだったのですが、goodを打ち違えてgookとしてしまったことがあります。出す前に気がついたのでよかったのですが、冷や汗ものでした。この語はベトナム戦争時の「ベトコン」からベトナム人の蔑称です。
日本人の蔑称
日本人の蔑称はよく知られているようにJapですが、短い語なので、英米のメディアの記事の見出しなどに戦後もしばしば使われてきました。しかしJapanese American Citizens League(日系アメリカ人市民同盟)がJapという語を使わないでくださいと伝える地道な運動をマスコミに対して行い、今ではほとんど使われなくなりました。オリンピックなどにおける国名の表記もかつてはJAPだったのが、今ではJPNに変更されています。
また、日本人や中国人などのアジア系はrとlの区別ができないとか、英語の発音が下手ということで、時々揶揄されることがあります。
「カチャッ」というカメラのシャッター音は、英語の擬声音としてはclickと表記されるのですが、日本製カメラの場合はcrickという音を発する、などとからかわれたものです。