「自動移換」のままでは、ただ資産が減るだけ

まず最も大きな問題は自動移換されてしまうと、その後は一切運用できないことです。定期預金にすら入りません。言わば現金の状態でそのまま置いておくのと同じですから、利息もつかないまま長い間放っておくことになります。今までのようなデフレの時代であれば、金利がつかなくてもそれほど大きな影響はなかったでしょうが、それにしても運用できないというのは大きなデメリットと言えます。

次に自動移換されている間は毎月52円の手数料がずっと引かれることになります。年間で言うと624円ですから、金額自体はたいしたことないように思えますが、前述のようにこの間は一切運用ができないため、金利もつかなければ運用益もありません。したがって、ただ資産が減るだけということになってしまいます。

コストと書かれた木製ブロックと小銭
写真=iStock.com/Seiya Tabuchi
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60歳になっても受け取れない場合が生じる

また確定拠出年金の場合は、原則として加入期間が10年以上ないと、60歳から受け取り始めることができません。自動移換されている間は加入期間とはみなされないため、仮に入社して5年間確定拠出年金に加入した後、転職し、そのまま手続きをせずに放ったらかしておくと、60歳になっても引き出すことができなくなってしまいます。

そして最後は資産を移す場合にかかる手数料です。会社を辞めた後6カ月間放っておくと自動移換となりますが、その際に手数料が4348円引かれます。いったん自動移換されてしまうと、またiDeCoや企業型へ資産を移さないと運用もできないことは前述の通りですが、そうやって戻すにも手数料が1100円かかります。一見、金額はたいしたことがないように思えますが、これらは全てそれまで積み立てられた資産から自動的に徴収されることになります。

このように自動移換というのは多くの問題があります。ただ、最初からiDeCoによって確定拠出年金を始めた人はこれについてはあまり心配する必要はないと思います。なぜならiDeCoは自分の意思で始めたものですから、その後転職したりすることで立場が変わっても手続きをする必要があるということを自覚している人が多いからです。ところが企業型に加入をしていた人は、会社の制度としてよくわからないままに加入していたケースも多いため、転職や退職をしても手続きをせずに放ったらかしてしまった結果、自動移換になるケースが多いのです。