弊社の場合、事業アイデアの評価は、基本的に私がひとりでやっている。最近は役員クラスの中にもきちんと評価を下せる人間が出てきたが、アイデアの評価は数値で判断できるものではないから難しい。そのアイデアが底の浅い思いつきレベルのものなのか、それとも一本芯の通った、大きな可能性を秘めたものなのかを判断する力は、一朝一夕には身につかないのである。
私がアイデアを評価するときの基準にしているのは、プレゼンテーションをする社員の目つきと姿勢である。
自分のアイデアを本気でいいと思っている社員は、まず、目つきが違う。
以前、カルチュア・コンビニエンス・クラブの増田宗昭社長にお会いする機会があったが、話題はもっぱらオープンしたばかりのTSUTAYA代官山店のことだった。1時間くらい夢中で話していらしたが、そもそも私に向かって代官山店がいかに素晴らしいかを熱弁しても、何の意味もない。
しかし、お話をうかがっていると、増田社長が代官山店に本当に入れ込んでいることがひしひしと伝わってくるのである。自分のアイデアに熱狂している人は、目つきが違う。目つきが違う人の話は、信じていい。
目つきと同時に重要なのが、姿勢や態度である。私は、プレゼンテーションのとき、私のほうばかり向いて話をする社員をあまり評価しない。決裁者ばかり意識して熱弁をふるう人間を、信用できないのである。なぜなら、社長に認められたい、あるいは自分のプライドを守るためプレゼンに勝ちたいといった動機から捻り出されたアイデアに、ロクなものはないからだ。
私が最も重視しているのは、提案者自身が自らのアイデアに熱狂しているかどうかだ。それさえあればビジネスとして成功する可能性は大いにある。反対に、どんなに優れて見えるアイデアでも、提案者がそれに熱狂していないときは、絶対に採用しないことにしている。