過疎地域は働く選択肢も少なく、時給は都心の半分以下
マスメディアがブラック企業を批判するのは社会的な意義がある。とはいえ、過疎地域にある企業のほとんどがブラック企業である現実も報道してはどうだろうか。日本が豊かになったといわれている今でも、過疎地域には豊かさとは無縁の貧しい生活があった。
その一つの事例として、私が高校生のときにやった農作業のアルバイトがある。元号が平成に変わる1年前の話である。そのときの時給は350円だった。その当時、都心の高校生の時給は800円程だったので、その頃から2倍以上の賃金格差があった。時給350円というのは都心で暮らしている者には信じられない話だろう。その当時の大人たちの言い分は「子どもに大金を持たせてはいけない」というものだった。地域の大人たちが談合してそのような低賃金になっていた。
これは貧困地域の社会システムによく似ている。たとえば、サハラ以南のアフリカでは5歳から17歳の4人に1人が働いている。子どもは成人と比べて就労条件などのトラブルが少ないため、不当に安い賃金しか支払われず、収奪的な扱いを受けている。それでも他に仕事がないので不当だと知りながら働いていた。
高校生だった私もお金がどうしても欲しくて、不当だと知りながら働いていた。過疎地域には働かせてもらえる所がないので仕方がなかった。
私は多くの貧困地域を訪れているが、そこで感じた社会の雰囲気と、日本の過疎地域の雰囲気はよく似ていた。日本が近代化しているといっても、過疎地域には都心とは違う昔ながらの考え方が根強く残っており、それはこれからも続いていくのである。