海外からの観光客が多い寺社で、「お賽銭のQRコード決済」が導入されている。しかし、ほかの寺社への広がりは限定的だ。なぜお賽銭のキャッシュレス化は広がらないのか。北海道大学大学院の岡本亮輔准教授は「『実体がないと気持ちがこもらない』という感覚は根強い。だがキャッシュレスがさらに普及すれば、そうした感覚もなくなるのではないか」という――。
ゆうちょの硬貨両替有料化に頭を悩ます寺社
寺社にお供えするお賽銭が話題になっている。きっかけは、ゆうちょ銀行が今年1月から硬貨の預け入れに手数料を課すようになったことだ。
例えば硬貨51~100枚の預け入れ手数料は550円だ。1円玉や5円玉ならば赤字だし、10円玉を100枚預けても、過半は手数料に消える。釣り銭作りの需要をにらんで近隣商店などに対して紙幣から硬貨への両替サービスを始める神社もあるようだが、多くの神社にとって悩ましい問題だろう。
寺社を訪れるほとんどの人がスマホを持っている現在、最も効率的な対応方法はお賽銭のキャッシュレス化だろう。コロナ禍によって接触回避が進む前から、特に海外からの観光客が多い寺社などではQRコード決済によるお賽銭システムが導入されてきた。しかし、お賽銭のキャッシュレス化には違和感を持つ人が多いようだ。