自民党は大企業を中心とする経済界と結びつきが強い。これに対し連合は「労働者の代表」を標榜し、自民党・経済界と対抗する「野党・労働界」の勢力結集を第一の政治目標としてきた。
旧社会党を支持してきた公務員や教職員などの労働組合と、旧民社党を支持してきた自動車や電機など大企業の労働組合には外交・安保政策で温度差があったものの、「労働者の賃上げ」という究極の目標で足並みをそろえてきたのだ。
この状況は2000年代に入って変遷していく。小泉純一郎政権で竹中平蔵経済財政担当大臣が旗を振った「小泉・竹中構造改革」により労働市場の規制緩和が急速に進み、大企業は正社員の新規採用を抑制して派遣など非正規労働を急増させた。
連合は「労働者の代表」とは言えない
旧民社党系の大企業系労組は組合員である正社員の待遇維持を優先し、非正規労働を増やす経営陣に接近。「非正規」よりも「正社員」の雇用や給与を守る姿勢を強めたのである。これによって非正規労働者の声が政治の現場へ届きにくくなった。
小泉・竹中構造改革は、公務員や教職員の削減も加速させた。これにより旧社会党系労組の組合員は減少し、連合内部での発言力も大幅に低下。連合執行部は経済界に近い旧民社党系労組の出身者で固められるようになり、経済界と連合の一体化が進んだのである。
発足時は800万人を超えた連合の組合員数は700万人を切り、この国で働く全労働者の1割そこそこでしかない。しかも連合は大企業の正社員の待遇維持に傾き、もはや「労働者の代表」とは言えないのが実態だ。
にもかかわらず、政権与党は政府の審議会のメンバーに連合幹部を加えて「労働者の意見を聞いた」とし、経済政策や労働政策を決定している。政権与党が大企業に有利な政策を進める「アリバイづくり」に連合は利用されてきたのだ。
連合執行部は「労働貴族」と呼ばれ、全国の労組から上納させた組合費を使って派手な社交を重ねているとも批判されてきた。芳野会長をはじめ現執行部が労働者の声を代弁しているとはとても思えない。
その連合執行部の言いなりになっているのが現在の立憲民主党である。労働者の支持が離れていくのは当然だ。
イギリスの労働者が二大政党政治を見限ったワケ
労働者の声が政治に反映されなくなる現象は、二大政党政治の本場である英国と米国で一足先に起きた。
英国ではブレア氏が率いる労働党が1997年に政権を奪取し、2010年まで同党が政権を担った。ブレア首相は労働組合重視の姿勢を転換し、経済界に接近する「第三の道」を掲げて保守党の地盤を切り崩し、政権交代を実現させたのである。
日本の民主党も菅直人氏らが2000年代初頭、ブレア労働党の「第三の道」を徹底検証し、政権交代戦略を描いた。民主党は英労働党のモデルを参考にしたのだ。