中ロ共同声明には「日本関連」が5つも

首脳会談後に発表された中露共同声明には、「日本」にかかわる部分が多く、今後中露が共同で日本に圧力をかける可能性をうかがわせる。

それは第1に、福島第一原発の処理水の海洋放出に懸念を表明したことだ。声明は、「日本は汚染水を責任を持って処理し、近隣諸国や関係国際機関と協調して行うべきだ」と主張した。

処理水放出には、韓国が最も強硬に反対しており、3国が連携して日本に圧力をかけそうだ。

第2に、共同声明は「第二次世界大戦の結果尊重と戦後秩序維持」を強調し、北方領土問題で中露が共同歩調をとる方針を示唆した。

実は中国外務省報道官は昨年7月末、北方領土問題について、「2国間で適切に解決すべき問題」としながら、「反ファシズム戦争勝利の成果は適切に尊重され、順守されるべきだ」と語った。この発言は、「4島は第二次世界大戦の結果、ロシア領になった」とするロシアの主張を擁護するものだ。

北方領土問題で中国は、1970~80年代は日本の主張を支持していたが、その後中立姿勢に転換した。中国がロシア擁護に回ったのは初めて。中国報道官は2月11日にも、「4島は日本領」とするエマニュエル駐日米大使の表明を受けて、同様のロシア擁護発言を行った。

ロシアは昨年来、北方領土で頻繁に軍事演習を行い、歴史問題で日本批判の声明を次々に発表している。中露が「反日」で結束を強める構図だ。

共同声明は「核心的利益と領土保全の強力な相互支援」もうたっており、今後はロシアが日中間の尖閣諸島問題で、中立姿勢から中国支持に転換する可能性がある。

北方領土
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ミサイル配備、インド争奪、台湾有事…

第3に、共同声明が、米国の中距離ミサイル・短距離ミサイル開発と欧州・アジアの同盟諸国への配備中止を要求したことも、日本の安全保障に影響する。

2019年に米ソ中距離核戦力(INF)全廃条約が失効した後、米国は中国が大量に保有するINFに対抗するため、新型中距離ミサイルの開発・製造に着手し、アジア配備を計画している。

ロシアはアジアと欧州への配備凍結を米国に求めており、中国の優位を温存しようとしている。仮に米国が在日米軍基地へのミサイル配備を進めるなら、中露が猛反発しそうだ。

第4に、共同声明は米英豪の軍事同盟である「AUKUS」に強い懸念を表明。「アジア太平洋での敵対的なブロックの構築」という表現で、日米豪印4カ国の「QUAD(クアッド)」も非難した。

声明は、「ロシア-インド-中国の協力形態を発展させる」としており、インドの「争奪戦」が激化しそうだ。