神奈川県座間市のアパートで男女9人の遺体が見つかった事件で、死刑判決が確定した白石隆浩は、SNSで自殺願望のある女性を探してターゲットにしていた。白石死刑囚に面会したジャーナリストの渋井哲也さんは「『ひたすら寄り添う』というネットナンパの手口が使われた。被害者の自殺願望を悪用した事件だ」という――。

※本稿は、渋井哲也『ルポ 座間9人殺害事件 被害者はなぜ引き寄せられたのか』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

男女9人の遺体が見つかった、白石隆浩被告が住んでいたアパート=2018年10月29日、神奈川県座間
写真=時事通信フォト
男女9人の遺体が見つかった、白石隆浩被告が住んでいたアパート=2018年10月29日、神奈川県座間

なぜ見知らぬ人との自殺を考えるのか

面会後、私は立川拘置所を出て、約250メートル離れた立川市役所内にあるコンビニまで歩いた。白石は「3万円」を提示していたので、とりあえずATMで同額を下ろす。拘置所に戻るまで、よくよく考えた。本当に現金を渡すべきなのだろうか。

私は原則として、金銭の授受を取材条件にしていない。ただ、白石の場合は拘置所内にいて、話を聞けるための関係づくりは難しい。さらに、事件内容は私がライフワークにしているテーマそのものだった。インターネットは居場所になりえるのか。若者はなぜ自殺するのか。インターネット上のコミュニケーションの結果、なぜ見知らぬ人との自殺を考えるのか――。白石と拘置所内で面会した記者たちの記事を読んでも、この点は不明だった。

窓口に向かい、受付の担当者を目の前にするまで迷ったが、熟慮の末、例外的ではあるものの、今回は現金を支払うことにした。現金は、封筒に入れずにそのまま担当者に手渡した。

2回目の面会は4月11日。日程は、最初の面会のときに白石が指定しており、電報で連絡を入れた。白石は手紙の返事を基本的にしない。そのため、今回も当日にならないと、面会できるかどうかは分からない。幸いにもこの日は先に面会をした人はおらず、2度目の面会もすることができた。

高校2年生のときからネットナンパを開始

待合室で30分ほど待たされた後、面会室「3番」に通される。このとき、白石は緑色の作業服のような服装をしていた。

白石が席に着くと、私は早速、関心事の1つであった「ネットナンパで出会えた人数」について質問した。

「正直、学生時代には全然会えていなかったんです。月に1人会えればいいほう。社会人になってからは1、2週に1人ですね」

前述の通り、白石はネットナンパを17歳、高校2年生のときから始めている。一方で、ナンパで女性と出会えるようになったのは、高校卒業後、就職をして1人暮らしになってからのようだった。出会う頻度が高くなったのは、やはり「コツが分かった」からということなのだろうか。

「そうです。それに、スマホの普及でアプリが出てきたからです」