スカウト時代はTwitterを利用

白石がナンパ用に使っていたのは、SNSとチャットアプリだ。そして、最も使っていたのは、位置情報を利用した「ぎゃるる」というアプリだった(2020年にサービス終了)。「安心・安全に対する取り組み」を掲げており、24時間365日のチェック体制、18歳未満は利用できないとされていた。一方、「ぎゃるる」は当初、異性交際を目的にしていなかったこともあり、出会い系サイト規制法の適用外。年齢認証はなく、事実上、中高生も利用していた。

私も取材の一環として「ぎゃるる」をダウンロードしたことがある。アプリを起動すると、GPSを活用して、自身の近くにいる女性ユーザーが表示される。男性のユーザーからは、女性の写真が閲覧可能だ。アプリ内のメッセージでやりとりができると、実際に会いやすい。もちろん、サクラも多く、別のサイトやアプリに誘導されることもある。

白石が学生時代に利用していたSNSは分かった。ではスカウト時代はどうしていたのか。

「Twitterを使いましたが、そのときは出会い目的ではないです」

Twitterは比較的、若年層に利用されている。アライドアーキテクツ株式会社の2020年12月の企業公式アカウント利用実態調査(調査対象4409人)によれば、年代別の利用率は、15~19歳が76.9%、20代が65.0%、30代が50.6%、40代が45.6%、50代が38.5%で、40代より若い層は半数以上が利用している。ナンパやスカウトをするとしたら、Twitterが最適なのだろう。

こうしてTwitterも利用し始めた白石。それでは、実際に犯行に使用したアカウントはいくつあるのだろうか。それまでは、《死にたい》と《首吊り士》の2つが主に報道されていたが、複数のアカウントを持っていたということは、報道されている数以上のアカウントを利用していた可能性もある。

ツイッターアプリ
写真=iStock.com/Wachiwit
※写真はイメージです

複数のアカウントを使い分け、9人を殺害

「5つです。《_》《sleep》《さみしい》《死にたい》《首吊り士》です。それぞれコンセプトが違います。日常生活の話をつぶやくもの、死にたいとつぶやくもの、自殺の情報や幇助をしているとつぶやくもの、です」

報道の内容以外に3つのアカウントを所持していたと話す白石。ただ、のちの公判で明らかにされるが、《終わりにしたい》というアカウントもあり、6つを利用していたようである。それもアカウントごとに使い分けており、かなり緻密にTwitterを活用していたようだ。中でも《死にたい》を最も使用していたようで、私が取材した限りでは、《首吊り士》でやりとりしたのが5人に対して、《死にたい》でやりとりしていたのは24人だった。白石自身も面会で「《死にたい》ですね。繋がった人の半分以上はこのアカウントです」と答えている。

これらのアカウントを使って9人を殺害した白石。前述のように、取材した限りでは最低でも29人とTwitter上でやりとりしていた。すると、そのうち直接会ったのは何人だったのだろうか。白石に聞くと、「13人です」との答えが返ってきた。つまり、直接会った人のうち4人は無事だったことになる。なぜ彼らはターゲットから外れたのだろうか。

「4人のうち1人は男性です。お金もなさそうだった。もう1人は、事件を起こした8月から10月まで付き合っていました。部屋にクーラーボックスがあったのを見て逃げ出した女性もいました。残りの1人は10日間だけ一緒に住んでいました」

ここで、最初の面会と話が食い違う。前回は「ネットからの出会いでは恋愛はしたことはない」と言っていた。はたしてどちらが正しいのか。本当のところは白石にしか分からない。