「死にたい」というつぶやきにはそれぞれの理由があった
白石がターゲットにしたのは「死にたい」などと自殺願望をつぶやく女性たちであった。一方で、逮捕後の報道では「本当に死にたい人はいなかった」と白石が供述しているとの情報も流れていた。この発言の真意はなんなのか。私の取材テーマと重なることもあり、白石にはどうしても聞いてみたかった。
「(『死にたい』とつぶやく女性たちと)DMなどで悩み相談になることがありました、それぞれに理由があるということです。学校に行きたくないとか、家にいたくないとか、彼氏に振られたとか。ある女性はよくよく聞くと、『家出をしたい』と言っていた。『なぜ?』と聞くと、『母親の管理がきついため』ということだった。そこで『うちに来る? 養うよ?』と誘うと、簡単についてきたんです。こんな風に理由があったんです」
白石自身の自殺願望についてはどうだろうか。最初の面会では、ネットナンパの延長線上で白石が被害者とコミュニケーションをとっていた様子が垣間見えたが、そのやりとりで白石は自殺の心情を的確にとらえていた。自殺願望は別にしても、少なくとも白石が自殺願望のある人とのコミュニケーションを学んでいる可能性は捨てきれなかった。
「(自殺を)考えたことはないですね。ただ、逮捕後、警察の取り調べが厳しい時期があったので、自殺が頭をよぎったことはあります。でも、立川(拘置所)に移ってからは、環境が改善されました。ご飯も美味しいので、今は(自殺を考えたことはなく)大丈夫です」
白石の話を聞く限り、やはり犯行時に自殺願望はなかった。被害者たちとのやりとりは、ひたすら寄り添うというネットナンパの手口を使っただけのようだった。
なぜ遺体をバラバラにしたのか
ここまでの話を整理する。報道と面会での話によれば、白石は失神状態でのセックスを繰り返し、発覚を恐れて被害者たちを殺害。バラバラにして遺棄した。改めて凄惨な犯行である。なぜ被害者たちをバラバラにまでする必要があったのか。
「外に遺体を捨てるとなると、埋めないといけない。遺体の全身があると、車で運んで埋められないですよね。バラバラにして、骨やバラせるものは燃えるごみとして捨てたんです。バラせないものはクーラーボックスに入れました」
さらに話を聞くと、犯行の計画性も徐々に見えてきた。
「1人目の女性を殺害する前に、過去のバラバラ事件がなぜ発覚したのかをネットで調べたんです。すると、山の中へ遺体が入ったクーラーボックスを運んでいる途中に職質された、などが書いてあった。それぞれの事件発覚に該当しない方法で実行しようと思ったんです。“携帯電話は長い間、放置しないと警察は位置情報を特定できない”と、前回(職業安定法違反容疑で)逮捕されたとき、刑事に教わったんです。だから殺害後、(被害者の)携帯を破壊しました」
実際に白石は3人目まで隠蔽工作のために、被害者のスマホを別の場所に捨てるよう指示した。一方で、4人目以降は捜査を撹乱させる工作をしていない。その理由はなんなのか。面会では聞くことができず、公判で明らかになるのを待つしかなかった。