ピンポイント攻撃でも日本は報復を受ける
こうした背景から、朝鮮戦争休戦後、米国は北朝鮮に対して複数の空母の朝鮮半島近海への派遣、戦略爆撃機・戦闘機の韓国上空への派遣といったレベルの干渉にとどまってきた。
北朝鮮の核関連施設などに対する限定的な攻撃を行うべきだという意見もある。2017年に米朝関係が緊張した際、一部の専門家たちはピンポイント攻撃を意味する「サージカルストライク」の可能性に言及していた。
しかし、たとえピンポイント攻撃であっても北朝鮮は黙ってはいないだろう。日本の領海内へのミサイル発射に踏み切るかもしれない。北朝鮮を攻撃する手段を持たず、なおかつ何があっても「遺憾」としか言えない日本が相手なら、さらなる報復攻撃を受けることはないからだ。
ミサイルと核兵器は体制維持のために存在している
北朝鮮軍は兵員の士気が低く、装備の更新もままならない軍隊だ。だが、核開発と弾道ミサイル開発に予算を重点的に配分して、実際に新型ミサイルを完成させてきた。
北朝鮮の核兵器とミサイルは、究極的には体制維持のために存在するのであり、米国との戦争を抑止するための手段なのだ。北朝鮮は弱気な姿勢を米国に見せない。強気の姿勢を崩すことは米国の圧力に屈することになり、体制の崩壊を招くことになるからだ。
一方で、大陸間弾道ミサイルを太平洋に向けて発射しても、実際に米国本土を攻撃することはない。日本や米国へのミサイル攻撃は米国からの大規模な反撃を招き、これもまた体制の崩壊につながる。
北朝鮮との交渉で突くべきはこの「弱み」だ。中国の反発は承知の上で、非核化に向けて、交渉と同時に北朝鮮が音を上げるほどの軍事的圧力を加えることが最終的には必要になるだろう。