伝統的な方法は安全、温度計購入もお勧め

では、安全なローストビーフはどのようにして作ったらよいのか? 伝統的な製法のオーブン調理は実は、温度上昇のスピードなどがよく調べられており安全です。また、低温調理器のメーカーも、科学的なデータを基に加熱温度や時間を決めたレシピを必ず添えており、そのとおりに作れば大丈夫です。そのほか、肉の温度変化についてきちんと記述してある書籍などのレシピで作るのをお勧めします。

鍋の湯につけて余熱を利用するなど簡単かつオリジナリティあふれるレシピを考案したいのであれば、温度計を購入し、肉に差し込んで温度が確実に加熱条件を満たしているのを確認してください。料理用温度計はホームセンターなどで、1000円程度から売られています。

肉に差し込める料理用温度計。パッケージでも「食中毒菌を殺すことができるめやすは中心温度75℃で1分間以上加熱」と説明されている
筆者撮影
肉に差し込める料理用温度計。パッケージでも「食中毒菌を殺すことができるめやすは中心温度75℃で1分間以上加熱」と説明されている

ただし、温度計は肉に差し込む前、必ずアルコールで消毒を。菌が付いた温度計を刺して菌を中に押し込んでしまった……というようなことがないように。

ハンバーグは竹串を刺して肉汁を確認

では、牛肉のレアステーキは? ステーキの提供については規格基準が定められていません。これは、ステーキではこれまでに食中毒が起きた事例がないため、と厚労省は説明しています。

日本食肉消費総合センターのウェブページによれば、レアの焼き加減の場合の肉内部温度は55~65℃以下。正しく焼かれたレアステーキは生焼けではありません。必要な加熱条件を満たしています。

ここまで説明すると、ハンバーグや成型肉(細かな肉を添加物等も用いて固めたもの。サイコロステーキなどの名称で売られることが多い)の焼き方は、簡単な応用問題となります。肉を細かく刻んだり挽いたりしたのを混ぜるこれらの料理は、肉の表面に付いていた菌が内部に入り込んでいる可能性があります。こねたり丸めたりしている間に菌が増殖するおそれも。菌数は、塊肉に浸潤した数と比較にならないくらい多いかもしれず、中まで75℃1分間以上の加熱が鉄則です。

食品安全委員会の調査事業によれば、加熱条件をクリアしているかどうかはハンバーグの断面の様子や焼き色からは判断できません。ハンバーグの焼き終わりは、竹串で刺して肉汁が透明になっていることを確認する、という従来通りのやり方をするのがお勧めです。

次回は、サラダチキンのレシピの注意点、肉の安全調理は、外見や色では区別できないことなど説明します。(後編「鶏肉・豚肉の注意点」に続く)

(記事は、所属する組織の見解ではなく、ジャーナリスト個人としての取材、見解に基づきます)

<参考文献>
厚労省・腸管出血性大腸菌食中毒の予防について
食品安全委員会・食中毒予防のポイント
食品安全委員会・食肉や内臓の生食について
内閣府食品安全委員会公式YouTubeチャンネルについて
食品安全委員会・2020年度調査事業「加熱調理の科学的情報の解析及び画像の開発」報告書

【関連記事】
「ワイン離れが止まらない」フランス人がワインの代わりに飲み始めたもの
「数百円なのに、おいしくて清潔」そんな食事が気楽にとれる先進国は日本だけという事実
「野菜たっぷりなら良いわけではない」糖尿病患者にほぼ確実に不足している"ある食べ物"
「シャインマスカットもいずれ廃れる」日本の農産物のブランド戦略に圧倒的に足りない考え方
40代で一気に「顔の老化」が進む人が毎朝食べているもの