「ドラッグのせいで勉強ができなくなったらいやだ」

「わたしは、ドラッグのせいで勉強ができなくなったらいやだ」
「もし誘われても、ノーって言う。友だちと一緒に、お互いを守る」

そう力強く子どもたちが言えるようになっただけでも、大きな進歩だ。

「コミュニティのサポートが必要だと思う」
「まわりのおとなたちに、知ってもらわなきゃいけない」
「このあたりの売店のひとたちが、売らないようにしてもらいたい」

これからどうできるか、を話し合っていたときにそんな声があがるようになり、決まった。地域全体に呼びかけよう、と。

具体的には、子どもたちが住むスラム地域のなかを練り歩いて、子どもたち自身が伝えようというもの。つまり、デモだ。

街頭で大規模にやるわけではない。あくまで、子どもたちが住むコミュニティにフォーカスしたものだ。それでも、子どもたち自身が自分たちの身を守るために声をあげること、そうすることの勇気を身につけること、そしてその声をコミュニティに聞いてもらうことが大切だと、わたしたちは思った。なにより、子どもたち本人が「やりたい!」と強い意志をしめしてくれたことが嬉しかった。それでこの超少人数のサービスクラブにも応えられることがあるなら、体当たりでもやってみようじゃないか。

デモ決行日、初めてスラムに足を踏み入れた

実行日を決めてからは、それに向けて、デモ中に掲げるプラ板代わりのポスターをみんなで手作りした。わたしたちが学校から持ってきたカラフルな画用紙や色ペンに、「こんないっぱい見たことない!」と子どもたちは大喜びして、夢中で取り掛かった。みんなで語呂のいいスローガンを考え、彼女たちがそれをヒンディー語で書き、わたしが英語を添える。誰がどこの色塗りをするか、どの色のペンを使うか、ワクワクに満ちた奪い合いが繰り広げられた。

あまった画用紙には、彼女たちがひとりひとりサインして、そこにわたしの名前もヒンディーで書いて、プレゼントしてくれた。

芝生の広場にあふれる高揚感は、「みんなで大きいことを成し遂げるんだ」という団結した士気のあらわれだった。

いよいよ決行日。いつものように芝生の広場に集まるが、しかし今日の舞台はここではない。今日は、子どもたちの居住域に足を踏み入れる。それは、わたしにとってもまた未知の一歩だ。