2021年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。健康部門の第2位は――。(初公開日:2021年8月28日)
日本と海外では歯科治療の内容が大きく異なる。歯科医の堀滋さんは「特に注意してほしいのは『歯の神経を取る』という根管治療だ。日本では成功率が6割と低く、メリットもほとんどないのに、広く行われている。歯の神経を取ってしまうと、取り返しがつかない」という――。

※本稿は、堀滋『ウイルスも認知症も生きづらいのも、すべて歯のせい?』(小学館)の一部を再編集したものです。

歯科治療中の口の中
写真=iStock.com/anatoliy_gleb
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日本のむし歯治療は時代遅れになっている

【患者】子どもの頃から歯医者さんに行っていますけど、むし歯の原因がなんなのかとか、聞いたことがありませんでした。

【歯科医】日本で一般的に行われている歯科の診療というのは、むし歯治療を中心に考えられているのです。モグラ叩きのようにむし歯が出てきたら治すという繰り返しですね。でも、むし歯になってしまったことには根本的な原因がある。その原因に対するアプローチが足りないというのが問題でしょうね。

【患者】海外では違うんですか?

【歯科医】そうですね。すでに世界的には「治療」よりも「予防」を重視した先端医療が導入されています。しかし、日本の保険制度では予防のためのケアは保険適用外ですからね。

特に歯科の保険診療は決められた手法、決められた材料、保険で認可されたものしか使えません。それが、時代に合わせて進歩すればいいのですが、治療法や使用材料は、わたしが開業した30年前とほとんど変わっていませんね。

【患者】だから、先生は保険診療を止めて、自由診療のクリニックを開業されたんですね。

【歯科医】わたしは昭和34年生まれなんですが、当時の平均寿命は60歳ぐらいでした。みんなむし歯が多くて、むし歯の洪水のような状態。だから、とにかく削って詰めるという、短時間で効率的に行える治療が必要な時代だったんですね。

でも、寿命も短かったので治療の繰り返しで歯がなくなっていても、困らなかったんです。つまり予防も必要なかった。その時代に考えられた保険制度が、人生100年時代の今もまだ続いてしまっている。

【患者】なるほど。時代遅れと言われるわけですね。