2021年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。健康部門の第3位は――。(初公開日:2021年7月26日)
熱中症対策として、水分補給は大切だ。だが、スポーツドリンクの飲み過ぎが思わぬ事態を招くことがある。急性の糖尿病の状態になる「ペットボトル症候群」だ。どうすれば防げるのか。産業医の池井佑丞さんが解説する――。
飲料水を飲む男
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2020年8月は熱中症で搬送された人が約1.2倍に

熱中症は毎年7月から8月に多く発生します。2020年は8月の熱中症救急搬送者数が2019年の約1.2倍となりました(総務省「令和2年8月の熱中症による緊急搬送状況」)。また、梅雨の晴れ間や梅雨明けは、暑さに身体が慣れていないため特に起こりやすいとされています。熱中症対策が必要な時期を迎え、「こまめな水分補給を」「喉が渇く前に」と積極的に水分を取っている人も多いと思います。そんなときに注意しなければいけないのが「ペットボトル症候群」です。

この記事では熱中症対策と、ペットボトル症候群についてお話しします。

寝不足、二日酔い、食事抜きのときも要注意

一般的に熱中症は「環境」「身体」「行動」の3つの要因により引き起こされる可能性があるとされます。「環境」の要因としては気温、湿度、風がない場所など。「身体」の要因としては暑さに慣れていない、疲れや寝不足で体調が悪いなど。「行動」の要因としてはスポーツや屋外作業などがあります(環境省「熱中症予防情報サイト」)。

熱中症の対策として必要なことは、「暑いところを避ける」「こまめな水分補給」「暑さに負けない身体づくり」の大きく3つに分けられます。

暑いところを避ける

・新型コロナウイルス対策で常時窓を開放している所や換気扇をまわしている所も多いと思いますが、エアコンを付け温度設定をこまめに調節しましょう。

・服装は、通気性・吸湿性のよいものにしましょう。首元が締め付けられると熱がこもるため、ネクタイはなるべく外し襟元をゆるめましょう。

・外に出るときはうまく日陰も使いましょう。日傘や帽子などの着用もおすすめです。

こまめな水分補給

・喉が渇く前に水分をとりましょう。皆さんご存知の通り人間の身体の大半は水でできており、生命活動にとって大事な要素のひとつです。体内の水分量の5%を失うと頭痛などの症状が、10%を失うと筋肉のけいれんや循環不全などの症状が起こり、20%を失うと死に至ることもあります(厚生労働省「健康のために水を飲もう講座」より)。水分を失うことがどれだけ危険かお分かりいただけたでしょうか。喉の渇きは脱水のサインですから、渇きを感じる前の水分補給が必要です。

・飲み水としては1日あたり1.2Lを目安に摂取しましょう。外出やスポーツの際はもちろん、就寝時や入浴中にも思っている以上に汗をかき、水分が不足します。起床時・入浴後にコップ1杯ずつプラスして摂取することを心がけましょう。

・スポーツや屋外作業でたくさんの汗をかくと、水分とともに塩分やミネラルも失われ不足します。経口補水液やスポーツドリンクなどは塩分やミネラルが含まれており、手軽に摂取することができますので活用しましょう。

暑さに負けない身体づくり

・身体が暑さに慣れていないと、うまく汗をかくことができず熱中症のリスクが高くなります。暑くなる前から汗をかく習慣をつけましょう。ウォーキングであれば30分程度でかまいませんので、通勤中に一駅分歩いてみるなど工夫をされてはいかがでしょうか。入浴で汗をかくのもおすすめです。

・寝不足や二日酔い、疲れがたまっている、食事抜きなど、体調が悪いときにも熱中症になりやすいため、十分な栄養と休養をとりましょう。

いよいよ夏本番です。暑さに負けない身体づくりや熱中症対策をしていきましょう。