単純労働者が仕事を見つけるのは困難になってきた

歴史をふり返ると、アメリカ経済は大きな変化を何度か経験してきた。建国したばかりのアメリカは農業国で、ほとんどの市民が農業に従事していた。そこに産業革命が起こり、工場で働く労働者が誕生する。そして現在、ほとんどの仕事はサービス産業で生まれている。農業と製造業が中心的な産業ではなくなるにつれ、そこでの仕事もどんどん少なくなってきた。経済のグローバル化の結果、多くの単純労働は国外に移転し、アメリカ人の単純労働者は仕事を見つけるのが困難になってきている。

市場で求められているのは、生産性の高い労働者だ。持っているスキルが高いほど、あるいは多いほど、その労働者の需要は高くなる。労働市場で競争力を保つには、同じアメリカ人の労働者だけでなく、世界の労働者を相手に競争しているという自覚が必要になるかもしれない。

男性の失業率は、女性よりも高い

デイヴィッド・A・メイヤー著、桜田直美訳『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』(SBクリエイティブ)
デイヴィッド・A・メイヤー『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』(SBクリエイティブ)

かつてのアメリカでは、高校を卒業して工場に就職すれば、それだけで高い給料をもらうことができた。しかし、そういう時代はもう終わってしまった。グローバルな労働市場で競争するには、教育や訓練で高いスキルを身につけ、転職をいとわず、労働者に対するニーズの変化に柔軟に対応しなければならない。

性別、年齢、居住地、学歴、職業、所得などの人口統計学的な属性のことを「デモグラフィック」という。失業をデモグラフィックという観点から見てみると、ある明確な傾向があることがわかる。たとえば、男性の失業率は女性よりも高い。白人の失業率はヒスパニックよりも低い。ヒスパニックの失業率はアフリカ系アメリカ人よりも低い。若い労働者は年配の労働者よりも失業しやすい。教育を受けた労働者が失業する確率は、中退者のそれよりもはるかに低い。

【関連記事】
名車「クラウン」があっという間に売れなくなった本当の理由
「日本勢はやられっぱなし」アマゾンに謎の中国メーカーが大量発生する本当の理由
品薄のニンテンドースイッチも半額…関西発のアウトレット店の「全品半額以下」のカラクリ
「三菱商事と丸紅の風力発電参入」は日本が"ものづくり大国"に返り咲く大チャンスである
「市街地で体感する違いは大きい」トヨタとスバルが共同開発した2台のスポーツカー"一般道路"での実力