新しいテクノロジーの登場で仕事を失う労働者がいる
構造的失業
構造的失業が起こるのは、求職者のスキルが労働市場で要求されていないときだ。それは地理的な理由かもしれないし、あるいはスキルが古くなったのかもしれない。たとえば国内のある地域で、ある産業が衰退する、あるいは他の地域へ移転すると、その産業で働いていた人は仕事を失うことになる。仕事を求めて他の地域へ移転することもできないかもしれない。その結果、市場で要求されなくなったスキルを持つ労働者が誕生する。それらの労働者は、再訓練を受けるか、そうでなければスキルの必要ない低賃金の仕事に就くしかない。
構造的失業は、経済学者のヨーゼフ・シュンペーターが「創造的破壊」と呼ぶものの結果であることが多い。技術革新が起こると、古いテクノロジーや産業は破壊され、浮いたリソースが新しいテクノロジーや産業に活用されて新しい創造につながるというのが、創造的破壊の考え方だ。
たとえばパソコンの誕生は、タイプライターにとっては死刑宣告に等しかった。新しいテクノロジーが進歩すると、古いテクノロジーと産業は破壊される。タイプライターを修理するスキルを持った労働者は、自分たちのスキルがもう求められていないことを悟り、自分たちの仕事が永遠に失われたという現実に直面する。
そして破壊の次は創造だ。新しい産業で新しい仕事が創造される。労働者にとっての問題は、自分のスキルが新しい産業で応用できないかもしれないということだ。教育と再訓練が、構造的失業を解決するカギになる。
「効率賃金」が構造的失業率を高める
構造的失業が存在するもう1つの理由は、労働市場に「効率賃金」が存在することだ。効率賃金とは、市場の需要と供給で決まった均衡賃金よりも高い賃金のことをさす。
効率賃金の目的は、労働者の生産性を向上させることだ。効率賃金を稼いでいる労働者は、同業他社に転職したら今と同じ賃金はもらえないということを知っている。そのため、「今の会社でもっと生産性を高めよう」と考えるのだ。
効率賃金は、労働市場により多くの人を呼び込む効果もある。しかし、彼らは効率賃金に惹かれてやってきたのであり、それよりも低い均衡賃金で働く気はない。その結果、彼らの存在が構造的失業率を高めることにもなる。労働市場により多くの人が参入してきたら、スキルの低い労働者は競争相手が増え、失業率が上昇するだろう。