失業率はGDPに影響する
失業は経済にとっても個人にとっても計測可能なコストになる。アメリカのように経済の規模が大きな国では、失業の機会費用は莫大だ。失業した労働者は生産する能力を失う。経済学者のアーサー・オーカンによると、公式の失業率が自然失業率を1%上回るごとに、実際の実質GDPと潜在的な実質GDPの間に2%の開きができるという(潜在的なGDPとは、今ある生産要素を最大限に使ったと仮定した産出量のこと)。
2009年の数字を見てみると、実際のGDPは14兆ドルで、失業率は10%だ。自然失業率を5%とすると、実際のGDPは潜在能力よりも1兆ドルから2兆ドルも低いと考えられる。ちなみに2兆ドルという数字は、フランスのGDPとほぼ同じだ。
DVや育児放棄が増え、犯罪や暴動も増加する
個人が負担する失業のコストも同じように甚大だ。失業が長引くと、貯金が底をついて借金生活になってしまうかもしれない。失業は人生で大きな出来事であり、普通の生活が断たれてしまう。その状態が長引けば、影響を受けるすべての人の心身の健康も損なわれるだろう。また、DVの発生件数と失業率は明確な正の相関関係にある。さらにつけ加えると、失業率が高い期間は離婚率が上がり、育児放棄も増える。
失業が国全体に広がり、長引くと、やがて犯罪や暴動の増加につながる。失業率がつねに高い地域は、暴力犯罪や窃盗が多い地域でもある。アメリカの都市部の貧しい地域に行けば、それがよくわかるだろう。発展途上国における社会不安の多くも失業率と関係がある。仕事のある人が、休暇を取って暴動に参加したり、何かを爆破したりするようなことはめったにない。どうやら失業は、世界を悩ませる問題の多くを発生させるのに必要な条件になっているようだ。