文春が「『新聞記者』の悪質改ざん」と報じる
シーズン1を見終わって私は、「薄っぺらな新聞記者ドラマ」だと思わざるを得なかった。プロデューサーや監督は、「政治的なドラマは形だけでいい」と思っているのではないのか。
ドラマならノンフィクションでは描き切れない権力の内側を、想像力も駆使して描いてほしかった。そんなことを考えていたら、週刊文春(2月3日号)が、「森友遺族が悲嘆するドラマ『新聞記者』の悪質改ざん」と報じたのである。
週刊文春によれば、「このドラマが制作過程で迷走を重ね、当事者を傷つけていたことはまったく知られていない」というのだ。
現在はフリーの相澤冬樹氏が、自死した赤木俊夫氏の妻の雅子さんから「遺書」を託され、2020年3月18日に発売された週刊文春で全文を公開したことは書いた。
その数日後、東京新聞の望月記者から雅子さんに封筒が届いたという。そこには、相澤記者の記事を読んで涙が止まらなかったとあり、映画『新聞記者』をプロデュースした河村光庸氏の手紙を同封してあった。
雅子さんは、以前から当時の菅義偉官房長官に鋭く切り込む望月記者には好感を抱いていて、連絡を取り合うようになり、河村氏も一緒にZoom越しに話をする運びになったそうだ。
雅子さんが驚いた「子どもの応援動画」
その際、河村氏が、「ドラマ版の『新聞記者』を制作していますが、赤木さん夫妻がモチーフです。雅子さん役は小泉君(小泉今日子)にやってもらいます。新聞記者役は米倉君(米倉涼子)かなあ」といったという。
だが、雅子さんは、河村氏の態度や言動から、何をどうゆがめられるか分からないと考え、協力は断ったそうである。
それでも望月記者は、電話口で涙ながらに、「私を切らないでください」と懇願したため、関係を続けることにしたという。この人の取材テクの得意技は泣き落としのようである。
以来、望月記者から財務省の文書改竄をめぐる連載の下書きを送ってくることもあったという。
さらに、突然送られてきたのが、望月記者の子どもなのだろう、幼さの残る姉弟が小さな拳を振り上げて「雅子さんガンバレ!」と叫ぶ動画だったという。
雅子さんは、森友学園が運営する幼稚園の園児たちが運動会で、「安倍首相、ガンバレ!」と連呼していた姿を思い出して、心が冷えこんだそうだ。
望月記者の子どもから、「裁判をおうえんしています」などと書かれた手紙も送ってきたという。
わが子を使ってまで、相手の懐に飛び込みたいという記者心理は分からないでもない。だが、子どもまで引っ張り出すというのはいかがなものだろう。