子どもの姓はどう決めるのか

戸主制度が廃止され、戸籍もなくなり、「夫の戸籍に入る」こともなくなって10年余り。全ての分野でデジタル化も進み、役場に行かずとも、オンラインで婚姻届も出せる。昔に比べたら結婚も手軽になったかにみえるが、一つ落とし穴があった。そこにはまった夫婦の話を聞いてみよう。1982年生まれのキム・ジヨンさんとチョン・デヒョンさん夫婦だ。

二人が婚姻届を出した時のことを、ここで再現してもらう。

二人はノートパソコンを前に置いてテーブルにつき、空欄を埋めていった。チョン・デヒョン氏は漢字の一画一画をパソコンで確認しながら、本貫の漢字を書いた。キム・ジヨン氏も大差はなく、自分の本貫の地名を漢字でどう書くかなんて、初めて見たような気がする。
他の欄は比較的簡単に埋めることができた。チョン・デヒョン氏は両家の両親の住民登録番号をあらかじめ確認しており、両親の情報もちゃんとかけた。そして五番目の項目になった。
「子の姓と本貫を母親の姓・本貫にすると合意しましたか?」
「どうする?」
「何を?」
「これだよ、五番だよ」
チョン・デヒョン氏は声を出して五番の項目を読み上げ、キム・ジヨン氏をちらっと見て、気にするほどのことじゃないと言いたげに、軽く言った。
「僕は、苗字は<チョン>でいいと思うけど……」
(『82年生まれ、キム・ジヨン』)

このわずか10行ほどに、韓国の現行の家族制度の特徴と問題がきっちり書かれている。婚姻届には今も「本貫」の欄があり、そこに記入すべき二文字の漢字は、検索しなければわからないほど馴染みがない。しかし、両親の住民番号については、あらかじめちゃんと聞いてある。そして、生まれてくる(かどうかはまだ未定の)子どもの姓と本貫について、先に合意するよう迫るのだ。

以前は自動的に父親姓になったが、今は母親姓も選択できるようになった。ただし、それはあくまでも例外措置であり、あらかじめ夫婦が合意してその意志を表明しなければならない。実際のところ、法律が改正された年に子どもが母親の姓を継いだケースは65組、その後も毎年300組ほどということで、まだまだレアケースである。