日本人は戦後のキャンペーン「北方の領土かえる日 平和の日」が効いて、ロシアに好意的ではない人が少なくない。しかしロシアは「日本が好き」という人が多い親日国だ。

なによりプーチンは、日本が死ぬほど好きだ。柔道は講道館五段の腕前である彼は、日本へのリスペクトが大きい。

プーチンに言わせれば、日本人は米国の眼を通して見るから、彼を見誤っているのだ。プーチンは、当時の安倍首相に「条件なしの平和条約を結ぼう」と提案した。プーチンは「俺は日本が心から好きだ。俺が大統領のうちに日ロ関係をよくしないと、もうチャンスはないぞ」と言いたかったのだ。

しかし安倍氏が重用した谷内正太郎・国家安全保障局長(当時)は、ラブロフ外相から「(北方四島の)二島を返還したら、そこに米軍基地が置かれることはあるか」との質問に「可能性がある」と答えてしまった。この大失敗で、平和条約締結は頓挫してしまったのだ。

21世紀で最も重要な外交だ

ロシア人はそもそも「北方領土」と呼ぶのはやめてくれと言い続けてきた。あの四島は第二次大戦が終わったとき、戦利品として連合国から与えられたと認識しているからだ。本当は北海道の北半分を要求したのに、米国(トルーマン大統領)は「千島列島の南部と国後島、色丹島、歯舞群島を含む南クリル諸島を持っていけ」と言ったのだ。

従って、日本政府が「“北方領土”を返せ」と怒っていることは、ロシアには理解できないのだ。終戦前に連合国がカイロ会談、ヤルタ会談で話し合って合意決定したのだから、終戦と同時に統治をはじめたにすぎないという認識なのだ。

仲よくするためには、お互いに理解を深める努力も必要だろう。ロシアと親密になれば、国防費は抑えられ、北朝鮮や中国は日本への態度を改める。エネルギー問題、カーボンニュートラルの問題でもメリットは大きい。日本にとって、21世紀で最も重要な外交だ。

米国目線で頭が凝り固まった人間にはできない発想の転換だろう。国家を分断させ連邦議会を襲撃するような輩が大統領になる国、アメリカの尻馬に乗っているだけの日本をそろそろ見直すべき時が来ているのだ。頭の体操でもいい。ロシアに1度「好き」と言ってみれば、メリットはかなり大きいと気づくはずだ。

(構成=伊田欣司)
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