このままではこどもを産めない国になる

これから子育ての社会化や親の負担軽減を真剣に進めないと、日本はこどもを産めない国になってしまうと思います。

日本の出生率は「1.34」と、人口維持ができる2.0まで全く届いていません。今までのように、政治や社会が子育てに不寛容なままですと、ますます出生率は下がり続けることでしょう。いずれ所得格差がはげしく一部のエリートしか将来を夢見ることができないといわれる韓国の「0.84」という出生率になってしまうと思います。もともと「こども家庭庁」は少子化対策を行うために創設されるのですから、ここはがんばってほしいです。

実際、保育事業者として親たちを見ていて、限界に来ていると感じています。

令和3年10月14日の読売新聞の1面に「不登校最多の19万6127人、小中高生の自殺最多415人」という衝撃的な記事が出ました。児童虐待も増えていて、厚労省によると令和2年度は20万5044件件と過去最高との報告がありました。

明らかにコロナ禍でのこどもたちへの負の影響が出ていて、さらに家庭での虐待も増えています。虐待というのは、閉鎖された空間の中で、力の強いものが弱いものへストレスなどのはけ口として行われます。

虐待は社会から孤立した小集団で起きます。

私自身、保育や児童発達支援、相談支援事業に携わっていますが、実際に虐待の増加を感じます。「包丁で刺されて死ね」などと、幼児ではあり得ない語彙ごいで恐ろしい暴言を平気で口走り、家庭で言われているのではないかと疑われるケースや、母親から父親がこどもへ乱暴な言葉を使うので聞いていられないからどうにかしてほしいと相談を受けるケース、夫からのDVに耐えられず夜逃げをして別居をするので、他の親戚が迎えに来ても引き渡さないでくださいという依頼など。以前もあったことですが、最近特に多くなっていると感じます。

赤ちゃんを抱いて悩む女性
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです

こうした事態を打開するためには、子育てを社会化し、子育て世帯の負担を減らすことが急務です。

保育園を有効活用してほしい

そこで保育事業者としての提案です。「こども家庭庁」には、以下の2つを実現してほしいと思っています。

①保育園を誰でも利用できる場所にしてほしい

認定こども園や保育園を利用するためには、1号、2号、3号認定というのを受けて初めて利用可能になります。

1号:幼稚園を利用する3歳からの認定。幼児教育を受けることを認める認定
2号:3歳から5歳児が仕事などの保育に欠ける要件を満たしているので、利用できる認定
3号:0歳から2歳児が保育に欠ける要件を満たすことで利用できる認定

そこに、新たに0号認定というのを新規に作り、働いていなくても保育に欠ける要件を満たしてなくても0歳から未就学児まで、誰もが利用できるようにしてはどうでしょうか?

誰もが気楽に保育園をつかえるようになれば、子育ての負担はぐっと減るでしょう。子育てのプロがすぐそばにいる安心感は、子育て世代にとって、これほど心強いものはありません。

②保育園の多機能化をしてほしい

保育園を保育だけでなく、子育て世代や地域の方が交流できる場所として機能していくこと。

休園日に、園庭などを開放し定期的なマルシェを開催したり、こども食堂などを行っている他の団体へ施設を貸し出し、人が集まる場所にしたり、地域の方々がつながるきっかけがあれば、子育てが孤独なものでなくなります。

現在は、保活といって保育園に預けるのが難しいといわれていますが、急速に進む少子化に伴い、これから1~2年で待機児童問題はなくなり、施設の空きが目立つようになります。保育園にとっても、新しい保育園の活用の仕方が進まないと園児が集まらず生き残っていけない世界になってしまいます。子育て世代にとっても、保育運営事業者にとっても、少子化対策を進めたい国にとってもみんなが幸せになるプランが、保育園の多機能化です。

国、自治体、保育園事業者で協力して、子育て世代にやさしい社会を実現していきたいと思います。

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