一般受験のための勉強なら独学でもできる

なかには大学進学をせずに起業する生徒もいます。新クラスの立ち上げ当時、一番学業成績のよかった生徒が大学進学よりも起業を選択したそうです。まわりからはもったいないと批判もあったそうですが、人からの評価よりも、今、何をしたいのかを優先したのです。必要になったら進学すればいいのです。実際、その生徒は数年後に立ち上げた仕事をしながら、必要な学びをするために、大学にも通っているとのこと。学ぶ意欲があれば、いつからでも学べるのです。

前述の福冨先生は、「高校レベルまでの勉強であれば、情報はいくらでもネット上に転がっていて、一般受験であれば独学でも十分できます。じゃあ、学校は何のためにあるのか。子供たちが自分を見つけ、自己を確立していくためには他者が必要であり、学校は、彼らが持っているものを最大限に引き出す場所である」と言います。

「学ぶことが楽しいと思うか、義務でやっているかでおのずと結果は変わるはず。大学進学のため、未来の準備のために今日頑張るというのはもったいない。今学んでいることが楽しい。悩んでいることが楽しいと感じてほしい」という言葉が印象的でした。

教員自身が「やりたい」というエネルギーを持つことが大切

「教員自身が自分の中から出てくる『やりたい』というエネルギーを持つことが大事だ」と言うのは、前述の佐野副校長。

そう思うようになったきっかけは、佐野先生自身の体験にあります。

前任校で大学進学に向けて勉強をさせる授業を行っていくうちに、生徒の目の輝きがなくなっていくことが気になり、外部とコラボする授業など新しい取り組みをして手応えも感じていた。しかし、新しいことをやろうとすると職場に軋轢も生む。そんな経験を通して、自らのあり方を問い直し、学習する組織・U理論・NVCなどを学ぶ中で、教員自身が自分らしくいられる組織にしていくことが大事だと思うようになったと語ってくれました。

そこで、かえつ有明に移ってからまず取り組んだのが、先生自身がなんのために教員になったのかという対話をくり返していくことでした。その中で、先生の中から「やりたい」というエネルギーが出てきて、自らいろいろなことに挑戦されるようになっていったのです。

教員のミーティングで感じた前向きなエネルギーは、先生自身が自らこのプロジェクトを楽しみ、よりよくしていきたいという意欲の表れだったのです。