「失敗してもいい」安心感がある

サイエンス科とプロジェクト科の授業は、図書館に併設されたスペースで行われている(筆者撮影)
サイエンス科とプロジェクト科の授業は、図書館に併設されたスペースで行われている(筆者撮影)

つまり、新クラスで行われているのは、生徒と先生が共に作る学び合いの場。その中で、教科書に示されている知識も習得し、さらに学び方も学んでいくのです。そして、この学びを経験した生徒たちは、自分たちでプロジェクトを立ち上げたり、創作活動を行うなど、主体的に探究学習に取り組みはじめます。

このクラスに入学したある生徒は、「中学生の時には、いろんなことに挑戦することがダサいみたいな雰囲気があったし、勉強はやらされるもので、楽しいと思ったことがなかった。でもこの学校に来て一番感じているのは、自分らしくいられているということです。何を発言しても受け止めてもらえ、失敗してもいいという安心安全な場があります。今やりたいことがたくさんありすぎて、毎日学校に行きたくて仕方ないです」と話してくれました。彼は、その良さを伝えたくて、自分から買って出て受験生や保護者に向けて学校説明会を企画しているそうです。

「大学受験を目的としていない」のに難関大に合格

同校の新クラス立ち上げの立役者の一人である佐野和之副校長は、「新クラスは大学受験を目的としていない」と言います。大学に効率よく入るための勉強はしないし、教科書の要素は網羅するけれど、こちらから順序立てて与えることはしない。自ら学んでいくクラスなので、「『教わっていない』というセリフはない」と説明会でもはっきり伝えているとか。

実際、大学には行っても行かなくてもいい。自分で選ぶことが大事だと言い切ります。

では生徒たちの進路はというと、2018~2021年の卒業生120名のうち、国公立7名、早慶上理ICU47名、GMARCH32名、海外大学18名(同校「高校学校案内」より)となかなかのもの。

このほとんどが公募推薦やAOなどの推薦型入試によって進学しています。自らさまざまなことに問いを持ち、やりたいことを探究してきた生徒たちだから、意欲はあるし、自分の言葉で伝える力はあるし、大学側も放っておかないはずです。

実際、日本でも推薦入試(2021年度からは学校推薦型選抜)やAO入試(2021年度から総合型選抜)の割合が増えています。すでに入学者の半分近くがこうした入試によって進学しているという事実を考えると、むしろ最先端の大学進学指導をしているとも言えるかもしれません。もちろん先生たちは、そんなことを言うと反論されるでしょうが、実際自ら考え、必要だと思うから大学に進学するので、入学後の意欲も高く行動力もあるでしょう。

ちなみに、高校新クラスの偏差値は60(W模擬調べ)推薦入試や一般入試の他に、国際生もいるので、入学時の学力は幅がありますが、生徒にはこのような傾向があるそうです。

「高校進学時に新クラスを選ぶ生徒は、既存の教育を受けて安心感を得ることよりも、結果がどうなるかわからず試行錯誤が続くであろう未知の世界にチャレンジしようという意識があると思います。それが目に見えて活発な生徒もいますし、表面的にはおとなしくても内面に強い想いを持っている生徒もいます。そして、それらの想いが、入学後にさまざまな形で表現できるようになっていきます」(佐野和之副校長)

やはり、自分の意思に自覚的になり、それを強く持っている生徒が多いようです。