「繰り上げ返済する」と「手持ち現金を貯める」得するのはどちらか

借り入れ金3000万円、返済期間30年、金利1.2%、一律平均払い(ボーナス返済なし)という住宅ローンを組んで、マンションか戸建てを購入したとします。

ボーナスは住宅費には使わないと最初に決めました。返済額は収入の20%以下に抑えて無理もしていません。すると、年月がたつにつれて給料が上がりますから、100万円単位で余裕資金が生まれることは、充分にありそうです。そのとき、

1.まとまった資金を住宅ローンの「繰り上げ返済」にあて、期間を短縮するか、または返済額を減らす。
2.住宅ローンはそのままにして、まとまった資金は「貯金」にまわす。

どちらにするか、迷う人がいるかもしれません。

「繰り上げ返済」をするかどうかは、自分のライフプランによります。自分や夫婦・子どもの年齢を記した年表に、子どもの入学・卒業や結婚、自分の定年といった主要なイベントを書き込めば、簡単にライフプランをつくることができます。

ライフプランの表に各年の予定収入・支出を記入すれば、いつ、どのくらいのお金が必要かわかります。必要なお金は、必要な時点までに貯金(積み立て)などして、手元に置いておかなければいけません。

スーツを着た担当者に説明を受ける夫婦
写真=iStock.com/SetsukoN
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無計画が損を生む

ですから、ローン支払いを早く終わらせたい一心で、むやみに繰り上げ返済をしてしまってはダメです。

住宅ローンを返しすぎ、子どもの大学入学金が足りなくなったケースをしばしば耳にします。住宅ローンは金利の安い有利なローンなのです。お金が足りなくなって、住宅ローンより金利の高い学資ローンや教育ローンでお金を借りれば、かなり損をしてしまいます。

地震に加えて最近の異常気象や突風・豪雨・洪水などの被害を見れば、予期しない自然災害というのは起こりえますし、新型コロナウイルス感染症のような新たな病が発生する恐れもあります。ある程度まとまった貯金を持っていれば安心でしょう。

ライフプランとにらめっこしたうえで、大丈夫と確信できれば、返済にまわしてもいいでしょう。支払い総額が減り、純資産が大きくなるメリットはあります。

ただし、非常に安い金利でお金を調達できているのですから、無理に繰り上げ返済をする必要はない、と私は考えています。

住宅ローンでは、「団体信用生命保険」(団信)にも加入しているのです。これは契約者が亡くなるか高度障害状態になるかしたとき、残りの住宅ローンがチャラになる保険で、住宅ローンの金利の中から保険料が払われています。

このメリットを享受せずに繰り上げ返済をするのは、じつにもったいないことなのです。