マーケティングの専門部署は持たない
「『このお店で買いたいな』というよりも、『このお店と付き合いたいな』と思ってもらうための活動はすべて、マーケティングだと思うんです」
共同創業者の佐藤さんは、そう話す。だから同社は、マーケティングの専門部署を持たない。
リアルの路面店を思い浮かべてもらえば分かりやすい。「雑貨店」に確固たる購買目的を持って訪れる人は多くないはずだ。もちろん、その店でしか手に入らないようなユニークな商品も置かれているだろう。だが「電化製品のように、分かりやすい機能性や革新性で差別化されるものではない」(青木さん)。
気が向いたときにフラッと訪ねたくなる雰囲気がある。何度も訪れ、店員との会話を楽しむ。「付き合っていく」うちに、ささやかな1品が愛おしくなり、購入に至る――同店が一貫して目指してきたのは、そんな顧客体験の提供だ。
「小さな花」を「価値観というリボン」で花束にする
「商品を売るためにコンテンツがあると言い切ってしまうのも、そういう意味でいえば少し違うかな。私たちにとっては、商品自体もコンテンツです。『このお店と長く付き合っていきたい』と心から思ってもらえるための一つの要素ですから」(佐藤さん)
青木さんは、そんなありようを「花束」になぞらえて説明する。
「洋服や化粧品などの物理的コンテンツ、そして読み物や動画、音声といったデジタルコンテンツ――これら一つひとつは、いってみれば『名も無き小さな花』かもしれません。少なくとも、1本で世界中をアッと驚かせるようなものではない。でも、そうした1本1本を共通の『価値観というリボン』で縛ってみる。コーディネートしてお客さんに届ける。『この花が好きなら、こういう花も合わせてみたらどうですか?』という提案を繰り返してきた結果、大きな花束になってきた、ということだと思います」(青木さん)