換気をしながらも、暖房と加湿器はしっかり使う

厚生労働省は、「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(快適職場指針)を公表しています。計画性を持って職場の環境改善を進めることは事業者の努力義務とされているのですが、その中で温度・湿度について適切に管理することが明示されています。しかしながら、いまだに日本においてオフィス環境に不満を抱えているという声は多く聞かれます。ある調査では冬場のオフィスの室温や乾燥に不満を感じている割合は半数程度とも言われています。

加えて、昨今はコロナ対策として換気の励行が呼び掛けられています。外気の取り込みによって室温・湿度が低下してしまうことはどうしても避けられません。ですから、室内の温度・湿度管理の重要性がさらに高まっていると言えるでしょう。換気との両立のため、しっかりと暖房・加湿器を使用していただくことをおすすめします。エアコンの噴き出し口からの風が直接当たる場所などでは、人に直接当たらないように風向を調節するほか、扇風機やサーキュレーターで空気の流れを作るのもよいでしょう。

加湿器が稼働中
写真=iStock.com/yocamon
※写真はイメージです

エアコン温度調整で残業時間が減った事例もある

光熱費の増加を懸念しておられる方もいるかもしれませんが、産業医の立場としては業務効率の向上がもたらす良い影響を優先して適切な職場環境づくりを進めていただければと思います。実際に、姫路市役所では夏場に28度に設定していたエアコンの温度を25度にしたところ、残業時間の減少による人件費の削減が光熱費の増加を上回ったといいます(※6)

(※6)「「25度で効率アップ」85% 夏の室温設定で姫路市職員」日本経済新聞2019年10月8日

温度調整によるコスト面での比較調査は公表されているものがありませんが、先述の研究結果での作業効率への影響を考えると、温度もまた調整すべきだということは容易に想像いただけると思います。

ただ、体感には個人差がありますし、業務内容によっても適温が変わってくるのも確かです。まずは基準として「温度:25度・湿度:50%」と覚えていただき、その上で個人個人が工夫する、職場に合った必要な改善を行う、等をしていただくのが良いでしょう。

一日の多くをオフィスで過ごすという方は多いと思います。冬場は感染症予防や寒さ対策が注目されがちですが、業務効率改善という視点からも「温度:25度・湿度:50%」のオフィス環境構築を目指してみてはいかがでしょうか。

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