読み聞かせの効果をさらに高める方法もある。子どもに質問をしながら読むのだ。Yes, noや指さしで答えられる質問ではなく、子どもが言葉を使って答えなければいけない問いが良い。

たとえば「この自動車は何色?」「ウサギさんはこれからどうすると思う?」といった質問だ。このように会話しながら読み聞かせを行うことをdialogic reading(対話的読み聞かせ)と呼ぶ。

Dialogic readingの効果を測るため、次のような実験が行われた。

21カ月から35カ月の子供がいる29組の親子を2つのグループに分け、1グループは母親が普段やってきた通りの絵本の読み聞かせを、もう1グループにはdialogic readingを、4週間にわたって実践してもらった。

すると、ITPAと呼ばれる指標で測定された言語能力年齢に8.5カ月分もの差が出たのである[8]

わが子にたくさん話しかけてみよう

もちろん、このような研究が子どもの知能発達の秘密をすべて解き明かしたわけではない。分からないことはまだたくさんあるし、科学的に立証されていない子育て法を使ってはいけないわけでもない。もちろんお金をかけた英才教育もやり方次第では有益だろう。

クリス・フェリー(著)、小野雅裕(翻訳)『ロケットかがく for babies』(サンマーク出版)
クリス・フェリー(著)、小野雅裕(翻訳)『ロケットかがく for babies』(サンマーク出版)

だが、確かな科学的根拠があり、誰にでもお金をかけずに実践できる教育法があるのだから、それを用いない手はないと思うのだ。

まずは子守り中にテレビをみたり携帯をいじったりする時間を減らし、子どもにたくさん話しかけることから始めてはどうだろうか。

そして寝る前にベッドで何冊かの絵本を一緒に読む習慣をつけてみよう。あなたのお子さんと一緒に心から楽しめる絵本に出会えたら、きっとそれは何ものにも替えがたい財産になる。

参考文献
[1] Capron, Christiane, and Michel Duyme. "Assessment of effects of socio-economic status on IQ in a full cross-fostering study." Nature 340.6234 (1989): 552-554.
[2] Hart, Betty, and Todd R. Risley. "The early catastrophe: The 30 million word gap by age 3." American educator 27.1 (2003): 4-9. (僕は読んでいないが、彼らはこの研究について本も出版しており、そちらの方が多く引用されている:Hart, Betty, and Todd R. Risley. Meaningful differences in the everyday experience of young American children. Paul H Brookes Publishing, 1995.)
[3] Rescorla, Leslie, Marion C. Hyson, and Kathy Hirsh-Pasek. Academic instruction in early childhood. Jossey-Bass, 1991.
[4] Pinker, Steven. The language instinct: The new science of language and mind. Vol. 7529. Penguin UK, 1995.
[5] Mares, Marie-Louise, and Zhongdang Pan. "Effects of Sesame Street: A meta-analysis of children's learning in 15 countries." Journal of Applied Developmental Psychology 34.3 (2013): 140-151.
[6] Debaryshe, Barbara D. "Joint picture-book reading correlates of early oral language skill." Journal of child language 20.2 (1993): 455-461. 
[7] Eliot, Lise. What's going on in there?: how the brain and mind develop in the first five years of life. Bantam, 2000. Chapter 14, pp390 本項で紹介した研究の多くはこの本を通して知った。教育本ではなく、胎児の頃からの脳と心の発達についての一般向け科学書である。子育てについては本書の14章から17章までが特に参考になる。英語が読める方は読んでみてほしい。
[8] Whitehurst, Grover J., et al. "Accelerating language development through picture book reading." Developmental psychology 24.4 (1988): 552.

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