テレビやYouTubeは親の代わりにはなれない

そうはいっても現代の親は忙しいから、四六時中赤ちゃんに話しかけることなんてできないだろう。

もし単純に「言葉のシャワー」が重要なら、子どもにテレビやYouTubeを見せておけばいい。あるいは、赤ちゃんの横でZoomミーティングをして会話を聞かせていればいいと思うだろう。

しかし残念ながら、子どもの脳はそう便利にはできていないようだ。

ある時期、聴覚障害者の親はテレビをつけっぱなしにすることが推奨されていた。しかしその後の研究で、それは子どもの言語能力の発達に寄与していないことが分かった[4]

また別の研究では、教育番組の「セサミ・ストリート」を18カ月以下の赤ちゃんに見せたところ知能発達にネガティブであることが示唆された[5]。番組が有害なのではなく、親が赤ちゃんに話しかける機会が減ったというのが一つの解釈である。

一方で、話しかける人は親ではなくてもいいようだ。保母さんや保育士でも同様の効果がある。

大事なのは、赤ちゃんの耳に入る言葉の量ではなく、生身の人間が赤ちゃんに向けて話しかけられる言葉の量なのである。

僕も忙しい時はテレビやゲームに子守りを任せてしまうことがあるが、それでは親子の会話が減るのみだ。子どもと一緒に会話をしながらテレビを見たりゲームで遊んだりすればいいのかもしれない。

ソファでノートパソコンを使用する女の子
写真=iStock.com/kokoroyuki
※写真はイメージです

ちなみにテレビやゲームが子どもの発育にどう影響するかは、多くの親が気にするところだろう。これについてもさまざまな面にスポットライトを当てた数限りない研究があるが、結果はまちまちだ。

ポジティブな効果もネガティブな効果も多数報告されている。要は一概に益か害かと言えるものではなく「良い面もあれば悪い面もある」のだろう。

「最強の幼児教育教材」は絵本の読み聞かせ

一方、ほぼあらゆる研究で知能発達にポジティブな効果が立証されている「教材」がある。それはゲームよりもはるかに安く、場所を選ばず、誰にでも手に入る。絵本である。

例えばこんな研究結果がある。41組の2歳児と母親に対し、読み聞かせを始めた年齢、読み聞かせの頻度、1週間あたり読む冊数、図書館を訪れる頻度などを調査し、子供の言語能力をRevised Reynell Development Language Scaleと呼ばれる指標で測定した。

その結果、読み聞かせを始めた年齢が子どもの言語能力ともっとも強く相関していることが分かった[6]。さらにその効果は小学校に行く年齢まで持続することも示唆された[7]