この段階で「ブレーキ」を踏むのは仕方がない

デルタ株の時の教訓を生かして、当時と同様かそれ以上の緊急措置を素早く取ったわけで、それが評価されたということだろう。

問題はこれからだ。果たして、オミクロン株にはこれまでのデルタ株と同じ対策を取ることが有効なのかどうか。デルタ株拡大の時のように経済活動を大幅に制限すれば、そうでなくても足腰が弱っている日本経済は大打撃を被る。

「デルタ株までとは症状が違い、別の病気のようだ」

沖縄などで感染患者を診察している医師からもそんな声が聞こえてくる。日本国内での感染拡大が始まったばかりで、オミクロン株の日本人への影響はまだよく分かっていない。1日100万人が感染している米国では明らかに重症化したり死亡したりする率が低くなっているが、それをもって弱毒化したと断定するのはまだ早い。この段階では、デルタ株の時と同じように、思い切り「ブレーキ」をかけ、徹底した対策を行うのは仕方がないことだろう。感染予防を訴える一方で、Go To キャンペーンの実施にこだわった菅内閣は、ブレーキとアクセルを同時に踏んでいるような感じがあったが、岸田内閣は一気にブレーキを踏んでいる。

不織布マスク
写真=iStock.com/InnaVlasova
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データを早急に集め、対応策を見直していく必要がある

だが、今後、オミクロン株の「実像」が分かってくるに従って、対応策も見直していく必要がある。オミクロン株はそれ自体が重症化をもたらさない株に変異しているのか、ワクチン接種した人と打っていない人の重症化率はどれぐらい差があるのか、死亡率はどれくらいか、年齢や既往症によって重症化率や死亡率にどんな違いが出るのか、そうしたエビデンス(証拠)データを早急に集め、国民に広く開示していくことだろう。そうしたエビデンスに基づかないで闇雲にオミクロン株を恐れ、必要以上の対策を取るのはまさに「あつものに懲りてなますを吹く」つまり、一度熱い思いをしたら冷たいものでもさまそうとする過剰な行動に他ならない。

これが、首相に求められる最も重要な「判断」だろう。いつまでも安全第一で「膾を吹いて」いれば、確かに支持率は下がらないかもしれない。だが、そうやって経済活動を制限し続ければ、今度は経済が立ち行かなくなる。