「水際対策」「検査の拡大」は失敗に終わった
新型コロナウイルスの変異型オミクロン株の国内感染が急拡大している。岸田文雄内閣は、世界で拡大するオミクロン株に対して、昨年から「水際対策の徹底」と「検査の拡大」を打ち出してきたが、年明けから「市中感染」が一気に広がり、感染源の追跡もままならないまま「第6波」の感染爆発が起きつつある。
もともとオミクロン株は感染力がデルタ株に比べて格段に強いと言われてきたので、いずれ水際は突破されると見られていたが、早々に壁が破られたことを示している。どこから市中感染に広がったのか、疫学調査の結果は明らかにされていないが、基本的には分からないということのようだ。つまり、水際対策も、検査の拡大も、残念ながらオミクロン株の前に失敗に終わったということだろう。
もちろん、感染が一気に広がった場所が、米軍基地がある沖縄や広島(岩国基地)、神奈川(厚木基地)であることを見ると、日本政府の「水際対策の徹底」が在日米軍には及んでいなかったと大いに疑われている。年末年始に沖縄に遊びに行った若者などが感染し、無症状のまま全国にオミクロン株を持ち帰って広げた、と見るべきだろう。もはや全国どこの都市にもオミクロン株感染者がいるという前提で今後の対策を取ることが重要になる。
素早い政府の対応、上昇した内閣支持率
こうした状況に対して、政府の対応は早い。自治体首長から出されていたまん延防止等重点措置の発動を早々に決めたほか、水際対策での外国人の入国禁止措置を2月末まで続けることも決定した。またワクチンの3回目接種を前倒しすることに加え、これまで対象外だった12歳未満のうち、5歳から11歳への接種を開始することも決めた。また、1月15日からの大学入学共通テストに関して、新型コロナの影響で受験できなかった場合に救済策を取るよう、文科省が大学に要請した。
間違いなく、この素早い対応は、菅義偉内閣の「失敗」を教訓にしている。デルタ株の蔓延に対して対策が後手後手に回ったと批判され、1年あまりで辞任に追い込まれた前内閣の轍は踏まない、ということなのだろう。
こうした対策が、とりあえず、国民の評価を得ている。
NHKが1月11日に公表した世論調査によると、岸田内閣を「支持する」と答えた人は57%。12月時点に比べて7ポイントも上がり、政権発足した10月以降、最も高くなった。一方、「支持しない」と答えた人は20%と6ポイント下がった。
同じ調査で新型コロナ対策への政府の対応を評価するかどうかという質問に対しては、「大いに評価する」が7%、「ある程度評価する」が58%と、合わせて3分の2が評価していることが明らかになった。