だが、各社とも、もはや、これ以上の消耗戦は避けたいのが本音だろう。

そこに、「電波オークション」の導入問題が持ち上がった。

となれば、実施に備えて原資を確保しなければならなくなるので、さらなる値下げを見合わせる格好の理由になる。

料金に転嫁されれば「官製値上げ」になりかねない

金子恭之総務相は就任直後、携帯電話の料金政策について「低廉化が進むよう、引き続き取り組んでまいりたい」と述べ、菅前政権の方針を継続する意向を強調した。

だが、電波の割り当てが「オークション方式」になれば、落札額が高かろうが低かろうが、落札した通信会社は資金回収のために、あの手この手の戦術を練ることになる。通信料金への反映は最たるものだろう。

つまり、「電波オークション」の導入は、「官製値上げ」の環境を整えることになり、金子総務相の決意とは真逆の方向に進みかねない。

「官製値下げ」の恩恵を受けている利用者は、まだ限られる。

通信大手各社が中間決算で明らかにした契約者数は、「ahamo」がやっと200万件を超えた程度。「povo」は100万超件。「LINEMO」に至っては開示もされなかった。格安がウリの楽天モバイルも370万件程度に過ぎず、約1億5000万件の個人向け契約者数からみれば、微々たるものだ。

新プランの認知度は高くても、実際に移行した利用者はきわめて少数なのである。総務省の発表とは大きな乖離があり、政権が期待するほど値下げ効果は出ていないのが実態だろう。

このタイミングで「官製値上げ」に道を開くことが適切かどうか、利用者目線で見極めることが求められよう。

総務省は、22年夏までに「電波オークション」導入の結論を得るとしているが、有識者会議の議論の焦点は今後、導入を前提とした条件整備に移るとみられる。

「電波オークション」の議論が深まるほど、「官製値上げ」の足音が近づいてきそうだ。

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