一方、総務省に対する「反逆」という指摘もある。

きっかけとなったのは、2021年春に東名阪エリア以外の5G用1.7GHz帯の周波数の割り当て問題。総務省は、各社とのバランスや審査基準で優位とみられていたNTTドコモを押しのけて楽天モバイルに割り当てたため、NTTドコモには「度を越した楽天モバイル優遇策」と映り、激しく反発したというのである。

本格的な5G時代の到来を前に、恣意的な割り当て方式が続くようなら、いっそ透明性の高い「オークション方式」で決着をつけた方がいい、ということのようだ。

逆に、「電波オークション」の導入を覚悟しているといわれる総務省の「後押し」をしたという見方もある。

菅前政権が押し立てた「官製値下げ」にいち早く呼応して政府に「貸し」をつくったように、先陣を切って「オークション方式」導入に賛意を示すことで、再び「貸し」をつくろうというのである。NTTの再々編はまさに途上で、NTTにとって再々編を狙い通りに運ぶためにも総務省の影響を極力排除したいという思いがチラつく。

いずれにせよ、NTTドコモの方針転換が「オークション方式」導入の流れを加速させる引き金になったことは間違いなさそうだ。

確かに携帯電話の料金は下がったが……

確かに、菅前政権の値下げ圧力による「官製値下げ」で、携帯電話の新しい料金プランは大幅に下がった。

総務省は、仮想移動体通信事業者(MVNO)を含む携帯通信各社が2月以降に提供開始した割安な新料金プランについて、5月末時点で契約数が約1570万件に達したと発表。利用者アンケートに基づく試算によると、料金引き下げによる国民負担軽減額は年間約4300億円に上るという。

アジアのビジネスマン
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大手3社も3月、NTTドコモ「ahamo(アハモ)」、KDDI(au)「povo(ポヴォ)」、ソフトバンク「LINEMO(ラインモ)」と名づけたオンライン専用の割安プランを相次いでスタートさせ、菅前首相は「携帯電話の料金値下げで家計の負担が減った」と胸を張った。

通信会社を乗り換えやすい環境も整いつつある。

携帯大手3社の契約者向けメール(キャリアメール)のアドレスは、契約会社を変えてもそのまま持ち運びができるようになった。利用者を「2年縛り」などで囲い込んでいた割高な解約金も、来春までに3社とも撤廃される。

通信大手各社の21年度中間決算は軒並み減益となり、「官製値下げ」が直撃したことが数字にはっきり表れた。