SNSやドラッグ以外の「ごほうび」
では、体に悪くないドーパミンの出し方はないのでしょうか。
もちろんあります。体を動かせば良いのです。
運動(しっかり体を動かす運動)をした後にはドーパミンが出ます。ドーパミン以外にも、幸せを感じるエンドルフィンが出ます。エンドルフィンには痛み止めの作用もあるので、運動した後に出るのは好都合と言えます。ここで言っておきたいのは、運動の後にもらえるドーパミンの方が、スマホからもらえるよりずっと量が多いということです。「ごほうび」をもらえるようになるには、ある程度の期間、運動を続けなければいけませんが、そのおかげで筋肉や肺や心臓も強くなります。
ドーパミンは昔、ヒトが食べ物を探し、狩りをしていた頃の「ごほうび」だったのでしょう。食べ物を探したり、狩りをしたり、もっと良い住処を探して移動したりするためには体を動かさなければなりません。そのため、脳はその人が運動すると「良いことをした!」とごほうびをくれるように進化したのです。そのあとまたすぐに新しい食べ物や住処を探す必要があったからです。運動は確かに体にも良いのですが、脳にとっては別の意味で「良いこと」だったのです。
そして、運動をすればするほど脳や体への効果が大きくなります。運動を続けていくうちに、運動をしていない時にも幸せな気分でいられるようになるのです。
昨日より少し幸せな気分に
では、ただ外に出て運動しさえすれば、誰でもこびとのハッピーのようにごきげんな気分になれるのでしょうか。
そういうわけではありません。
運動を始めたからといって、朝はうきうきとベッドから飛び出し、つらいことがあっても1日中鼻歌を歌いながらごきげんに過ごせるというわけではないのです。その人の性格は前と同じままで、悲しいことが起きればやはり泣くでしょう。
でも全体的には、昨日よりも少し幸せな気分になることが出来ます。悪くない話ですよね。
逆に、こういう気分になることはありませんか? 元々そんな性格ではないし、何かつらいことがあったわけでもないのに、ゆううつな気分になる。特に理由はないのに、何となく気持ちが暗くなる。
こうした状態が長い間続くことを「うつ」と呼びます。大人や若者に多いのですが、子供でもうつになることがあります。
うつになると、何もかも最悪で無意味だとしか思えず、毎日がどんどんつらくなります。そうすると引きこもってしまい、それまで好きだったことも、やっても意味がないように思えて、やらなくなってしまいます。楽しいことをしないでいると、幸せな気分に戻れるチャンスはますます減ってしまいます。