西側への不満と東欧諸国への怒りがある

2014年動乱のあとに大統領になったポロシェンコは、東部ウクライナの問題(ドネツク・ルガンスク)をミンスク合意により現実的に解決することに反対ではなかったが、基本的には親西欧路線であり、いずれ国民投票によってNATO加盟問題を決したいという、ロシアから見れば誠に穏やかならざる政策をとり続けた。

2019年の大統領選挙では俳優出身のゼレンスキーがポロシェンコを破って当選した。新政権の方向性としては、EUやNATOとの交流拡大と東部のロシア派勢力についてのロシアとの話し合い政策を進めようとしていると伝えられるが、この緊迫する情勢の中で、舵取りの方向性は見えてきていない。

結局の所、1991年12月の人為的国境線に満足できないロシアの根源的不満、国民投票によって民族の記憶にあるクリミア領有をしたことへの正当性意識、ジョージア、ウクライナと続くNATO加盟要求に対する怒りがロシアの政策の根本にあるのではないか。

これに対してクリミア併合を「武力による現状変更」としか見られないNATOは、プーチンの再度の武力行使への猜疑心と恐怖心からロシアを見続けているように見える。

かくて今、プーチンが東部ウクライナにいる60万ものロシア人を見捨てることはないという冷戦後の欧州史の核心(佐藤優「ウクライナ危機の深層」、12月12日付産経新聞)をめぐって、欧州における戦争と平和の問題が大きく展開しているのではないか。事態の帰趨はまだ見えない。(12月13日筆)

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