デマを訂正することで加害者家族の未来を守る

重大事件の家族をサポートする過程で、私は間違った情報を訂正していく意味に改めて気づきました。この活動は、飯塚氏の家族を支えるだけでなく、犯罪加害者の子どもたちの将来のためにもなるんだ、と。

――どういうことでしょう。

阿部恭子『家族間殺人』(幻冬舎新書)
阿部恭子『家族間殺人』(幻冬舎新書)

犯罪加害者となった人物に、幼い子どもがいるとします。いつかその子が成長したとき、自分の親について、親の事件について調べると思うんです。そのとき目に入ってくるのが、事実を無視した記事や、感情的なコメントばかりだったらどう受け止めるでしょうか。きっと大きなショックを受けるはずです。

でも、そのなかに少数だとしても、事実に基づいた記事や、家族の思いなどが残されていれば、少しは救われるのではないか。私は、そんな子に、世の中は間違った情報を垂れ流す人ばかりではないと知ってほしい。いい意味でのデジタル・タトゥーもあるんじゃないか、と思うんです。

「加害者側の言い分や主張なんて信じるな」「罪を犯したのだから制裁を受けるのが当たり前だ」……。

私たちの活動や姿勢に対して、そうした批判もあります。実は、私はそうした意見もあるべきだと思っているんです。情報を取捨選択して判断していくのは、一人一人の市民です。だからこそ、知りえた事実を残していく。それも加害者遺族の支援として必要だと考えています。(第3回に続く)

(聞き手・構成=山川徹)
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