3つ目の「コミュニケーション意欲」は、どんな時代にあっても必要不可欠な力であろう。仕事などで普段関わらない人との関係を新たにつくろうとしたり、できるだけ多くの人とつながっていようとする志向のことだが、これも仕事の成果を挙げるうえで非常に重要となる。

単なる意思疎通のみにとどまらず、コミュニケーションの場そのものを探し出したり、自らつくり上げようとする意識が強いかどうか。一人で解決できないような問題に直面したときに、限られた時間で力になってくれそうな人物を探して解決に結びつける能力が、ビジネスの中で求められる場面は非常に多い。どちらかというと、これは能力よりも、人とつながっていたいという強い「意欲」によって生み出されるものだ。

これらの能力にプラスして必要なのは、自分でキャリアをデザインしていこうとする意思である。これは年齢が高くなるほど必要性が増す。会社にキャリアプランを委ねていいのはせいぜい30代前半まで。スキルの個人差が拡大する30代後半以降は、自らキャリアを見直して望む形へと近づけていく努力が不可欠だ。

なぜ30歳過ぎたら「仕事を捨てる」のか

長い職業人生の入り口にあたる20代のはじめに明確な目標を定め、そこから逆算して計画的にキャリアをつくり込んでいく方法は、現実的ではない。未熟な職業経験をもとに最適な道を予測するのは難しく、時代の変化などの外的要因で目標変更を迫られるケースもあるはずだ。

米国スタンフォード大学教授であるクランボルツは、1999年に発表した「偶発性理論」の中で、「キャリアの80%は予期しない偶然の出来事によって支配される」と説いた。この理論の中でも、「仕事の機会を自らつくりだす積極性」と、「その機会を生かせるような能力」を身につける必要性が強調されている。要するに、下手に計算して仕事を取捨選択せず、目の前に与えられた仕事を懸命にこなし、人との出会いを大切にすることで道が開けるというものである。

私もこの考えにおおむね賛成だが、偶然性だけに針路を委ねてしまうのではなく、ライフステージの節目においては自ら意思決定を行うことも必要だと思う。