習近平体制の中国では、「ネット世論の誘導」が年々巧妙になっている。ジャーナリストの高口康太さんは「大きな特徴は騒ぎになるまえに対処すること。政府に不利な書き込みはできず、ネット上には都合の良い発言しか残らない。だからコロナ封じにも成功した」という――。(第1回)

※本稿は、高口康太『中国「コロナ封じ」の虚実 デジタル監視は14億人を統制できるか』(中公新書ラクレ)の一部を再編集しています。

中国の中央人材工作会議が27日から28日まで北京で開かれ、習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委主席が出席し、重要演説を行った。
写真=中国通信/時事通信フォト
中国の中央人材工作会議が27日から28日まで北京で開かれ、習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委主席が出席し、重要演説を行った。

中国共産党によるネット検閲の実態

監視大国・中国。こう言われるようになって久しいが、果たして中国で実際に何が行われているのか、なぜ監視大国となったのか、何を目的としているのか、こうした点について、日本ではまだ広く知られていない。

本稿ではインターネットの発展がもたらした中国共産党の統治の危機と、それに反発する形で打ち出されたネット世論対策について取りあげる。多くの読者にとっては意外な話となるだろうが、こうした監視、ネット世論対策は政府が開発した技術ではなく、民間企業によって育て上げられたテクノロジーに依存している。

そして、今や最前線の取り組みは、インターネットという仮想空間にとどまらず、現実社会をいかに監視するかに焦点を移しつつある。

「人民網・ネット世論分析師の2020年第3期研修班がスタートします。党および政府機関の幹部向けの内容です。約3週間、16コマの授業で、CETTIC(中国就業研修技術指導センター)の修了証書を授与。その他、1年間にわたり選択クラスも受講可能です。受講費は5980元(約10万2000円)です」

これは中国のネットに掲載された広告だ。中国共産党が厳しいネット検閲を実施していること自体は日本でも広く知られるようになったが、その実態についてはほとんど知られていない。