語学マスターの専門職も50代で紹介ナシ
河本陽子(仮名)55歳
外資系正社員→派遣登録→時給ダウン→派遣切り
16年間、派遣で貿易事務の仕事をしてきた河本陽子さん(55歳・仮名)には、この1年間仕事の紹介がなく失業状態が続いている。
大学卒業後、外資系企業などで正社員として働き、貿易事務の仕事に携わってきたが、リストラにあい退職。体調を崩し2年ほどの静養を経てから、1994年、派遣として働き始めた。38歳だった。
当初の時給は1800円。自費で英会話講座の受講を続けるなど、スキル向上には力を尽くしたが、契約更新や派遣先が変わるたびに時給は下がった。06年には1700円、08年には1650円。運よく派遣先が途切れずに働けても、年収は400万円程度だったという。
「正社員なみの給与があるようにも見えますが、派遣の不安定さをカバーできる待遇ではありません。ボーナスはなく、交通費すら出ませんから」
仕事には多数の専門知識が必要とされる。貨物船を2週間借りて、北米の2カ所で木材を積み込み、日本の8カ所の港でおろす。そのために航行ルートや荷物の積み降ろしの順序、燻蒸の場所などを決め、顧客と交渉する。資金の回収を行うこともあった。素人には務まらない。
「仕事はやりがいのあるものでしたが、派遣だというだけで、成果は自分の実績になりません。プロジェクトの途中で派遣契約が終了することもありました」
同じ派遣先での勤務は平均で1年。契約期間は約3カ月で、3回ほどの更新で「期間満了」となる。
「長くて3カ月のスパンでしか雇用が保証されませんから、口頭で契約を更新すると言われていても、契約書が送られてくるまでは不安でした」