専用車や「おもてなし」で費用は合計4億円

仮にモニターツアーが行われる場合、1人当たりの旅行費用は100万~120万円程度になり、全員分で最低でも4億円に膨れ上がる試算だ。国ごとに複数のグループに分かれて各地を視察する。インバウンドツアーに詳しい旅行代理店幹部は、「1グループは少人数で専用車対応、特殊言語のガイドも必要と、どんどんコストがかさむはずだ」と指摘。招待する以上、それなりの「おもてなしを」と考えているようで、1泊2食付きで1人当たり5万円以上する部屋も想定されている。

温泉
写真=iStock.com/gyro
※写真はイメージです

ちなみに、今回日本政府から招待を受けているタイは、「部分的開放」という形で、観光客の受け入れを行っている国の一つだ。リゾートとして知られるプーケット島では、「サンドボックス(砂場)」という名で観光客を封じ込める方式を導入。7月1日から、ワクチン接種を条件に欧州などから観光客を迎えた。

その後、感染者数はゼロにはならなかったものの、大過なく諸問題はクリアできたとし、現在ではタイ各地への渡航時は外国人の隔離措置が1泊2日程度という、より負担のない形で実現している。政府が大規模ツアーを企画した背景には、日本に先んじて外国人受け入れに成功している他国の事例を、今後のインバウンド政策の参考にしたいという思惑もあるのだろう。

受け入れる観光地からは「立ち寄らないでほしい」

以上のように、一見すると招待旅行だけあって良さそうに見えるが、それなりに厳しい条件がいろいろと付けられている。入国後はホテル客室内で4日間の待機が求められ、あらかじめ決められたルート以外の自由行動はほぼ全面的に不可。観光名所に立ち入る際は常に定性抗原検査を受ける……などだ。

また、訪問できる目的地に外国人の人気が比較的高い京都府、北海道は入っておらず、主要国際空港のある東京、大阪、愛知も除外されている。これは、多くの都道府県がこの時期の外国人受け入れに難色を示したためだ。今回受け入れを認めた地方自治体も、「ルート上にある道の駅がトイレを貸さないと言っている」、「地元の飲食店から『ウチにランチで立ち寄るのはやめてほしい』と要望された」など、団体客の受け入れに苦慮している様子が聞かれた。