目先の株価が下がっても動じる必要はない

アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスもまた、会社が困難に直面した時にバフェットの力を借りています。1994年に創業し、95年からサービスを開始したアマゾンはわずか2年後の97年5月に株式を公開しています。当時はネットバブルの時代であり、スティーブ・ジョブズ率いるピクサーなどもこの頃に上場するなど、利益が出ているかどうかよりも会社の成長性が重視された時代です。

当時、アマゾンは「インターネットのイメージキャラクター」であり、べゾスも「時の人」としてもてはやされましたが、2000年にネットバブルが崩壊したことでアマゾンの株価は106ドルをピークに下がり続け、2000年6月には33ドルにまで下がっていました。

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写真=iStock.com/tntemerson
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当然、社内には動揺が広がり、ウォール街からは利益を出すようにという圧力が強まりますが、この時、ベゾスは全社集会で「株価が30%上がったからといって30%頭がよくなったと君たちが感じることはないはずだ。それなら、株価が下がったときも、30%頭が悪くなったと感じなくていいだろう」と呼びかけるとともに、バフェットがしばしば引用していたベンジャミン・グレアムの言葉を紹介しています。
「株式市場というものは、短期的には投票機、長期的にははかりである」(『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』ブラッド・ストーン著、井口耕二訳、日経BP社)

バフェットが指摘しているように、株式市場というのは気まぐれなもので、その企業の価値に相応しい株価が常につくわけではありません。しかし長期的に見れば、会社が持つ真の価値が株価に反映されるだけに、目先の株価に振り回されてはいけないというのがバフェットの考え方でした。

ベゾスを「アメリカ最高のCEO」と評価

当時、ベゾスはバフェットについて「だいたいウォーレンの言うことには耳を傾けないといけないんだ。かなり手厳しいことを言うが、何しろ天才だし、これまでずっと言うことが当たってきた」(『スノーボール(改訂新版)〔下〕』アリス・シュローダー著、伏見威蕃訳、日経ビジネス人文庫)と高く評価しています。

そして2012年に『ワシントン・ポスト』の社主であるドナルド・グラハムが会社の売却を考えた際、株主で相談相手でもあるバフェットに何人かのリストを見せて誰が相応しいかを尋ねたところ、バフェットはベゾスを「アメリカ最高のCEO」と評価、その後、アマゾンではなくべゾス個人への売却がまとまっています。