メルセデス・ベンツの新型Cクラスが2021年6月に国内導入された。これまで4台のCクラスに乗り続けてきた交通コメンテーターの西村直人さんは「歴代Cクラスオーナーの1人として、今回の価格はCクラスの価格とは言えないのではないかと感じる」という――。
メルセデス・ベンツの新型Cクラス
筆者撮影
メルセデス・ベンツの新型Cクラス

扱いやすいボディサイズ、リーズナブルな価格

メルセデス・ベンツの主力モデルのひとつ、「Cクラス」「Cクラス・ステーションワゴン」がモデルチェンジを行った。2021年6月に国内導入された新型は通算6代目(車両型式名はセダンがW206、ワゴンがS206)。これまで通り、後輪駆動を主体に4輪駆動モデルもラインアップする。

メルセデス・ベンツでは現在、アルファベットと数字を組み合わせた車名を採用するが、今回紹介するCクラスの初代は1982年の「190」シリーズが該当する。190の車両型式がW201だったことから、その後継車種は現在に至るまでCクラスが担う。

筆者は、歴代Cクラスのうち2代目、3代目をセダンボディで、4代目はステーションワゴンボディで前期と後期、都合3世代に渡り計4台乗り続けている。全幅は1800mm以内で小回りが利き、日本の公道でも乗りやすいことから重宝している。

これまでCクラスは各国で商業的な成功をおさめてきた。メルセデス・ベンツが大切にする質実剛健さを扱いやすいボディサイズで実現し続けたこと、これがヒットの理由だ。2世代前の後期モデルからはSクラス譲りの衝突被害軽減ブレーキにはじまる先進安全技術を搭載。これも人気を後押しした。

さらに、歴代Cクラスはメルセデス・ベンツのなかではリーズナブルな車両本体価格であった。ここも支持され続ける理由ではないかとCクラスオーナーの一人である筆者は考える。事実、歴代モデルには300万円台のグレードも存在した。

「ミニSクラス」とも呼ばれている

一方、世間では「メルセデス・ベンツ=高級車」であるとの声が根強いが、それにはフラッグシップであるSクラスの存在が大きい。

歴代Sクラスは、時代に求められる最新技術をいち早く採り入れ、万が一の交通事故でも乗員を徹底して守るという安全思想を貫いている。だからこそ世界の要人に選ばれた。

ただし、そこには名だたる高級車が魅せる絢爛豪華な内外装はなく、むしろ地味な部類で特別な仕掛けもない。人に寄り添う安全なクルマ造りに徹したことが今の評価に通じている。

2021年1月、7代目となる新型Sクラスの国内販売が始まった。新型Cクラスは、新型Sクラスに見た目が似ていることから「ミニSクラス」とも呼ばれる。

似ているのは外観だけではない。車内中央にはSクラス同様に大型の縦型ディスプレイを配置した。Cクラスの液晶画面「メディアディスプレイ」(11.9インチ)はSクラスが備えるそれ(12.8インチ)より一回り小さい画面サイズながら、ナビゲーション機能、エアコン操作パネル、車体の機能設定、コネクト技術など多彩な機能が織り込まれた。

11.9インチの「メディアディスプレイ」
筆者撮影
11.9インチの「メディアディスプレイ」

これら各機能は、画面をタッチする、もしくは「Hi,Mercedes!」をトリガーにしたボイスコントール機能「MBUX」(Mercedes-Benz User Experience)で操作ができる。見た目だけでなく、車内でできることも最新のSクラスと遜色ない。